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錯聴連続聴効果

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A
B
C
D

Aはある文を読み上げていますが、ところどころ音がとぎれています。何と言っているのでしょう。BもAと同じ内容の文ですが、とぎれたところに雑音が入っています。CとDは同じ音楽をとぎれとぎれにしたものですが、Dの方はとぎれたところに雑音が入っています。聞こえ方を比べてみてください。

説明

AとB、CとDは、雑音以外はまったく同じです(図1:Aの音、図2:Bの音の、振幅波形(上段)とサウンドスペクトログラム(下段))。雑音の部分には、声やピアノの音は存在していません。それにもかかわらず、AよりもB、CよりもDが、明らかに聞き取りやすいのではないでしょうか。BやDでは、雑音の背後で、声やピアノがなめらかにつながっているように聞こえます。このように、音響信号の中断部分に別の強い音を挿入すると中断部分が補完される現象を「連続聴効果」、とくに話し声の場合を「音韻修復」と呼びます。

図1

図2

人の話し声や音楽など、日常生活で意味のある音は、ある程度滑らかに変化します。つまり、ある瞬間の情報は、その前後の情報から推定可能です。

では、音がとぎれとぎれの(ところどころが無音になっている)場合より、とぎれた部分に雑音が入っている場合の方が滑らかに聞こえて内容が聞き取りやすくなるのはなぜでしょうか?残っている情報は両者とも同じはずです。

実は、無音というのは、その部分に「音がない」という強力な証拠になってしまうのです。せっかく前後の部分から欠落部分が推定できたとしても、「音がない」という強い証拠の前に、その仮説は棄却されてしまいます。一方強い雑音が入ると、本来そこに音があってもマスキングによってかき消されるので、音がもともとあってもなくても、ある意味同じことです。つまり、「音がない」という証拠はなくなります。そうすると、前後の部分から作り出された「仮説」が生きて、そこに本来存在していたと考えられる内容が知覚されるのです。

日常の環境は、静かな実験室とは異なって、さまざまな音が鳴っています。聞きたい音の一部が別の大きい音でかき消されてしまうことも珍しくありません。連続聴効果は、やかましい場所で聞きたい音を聞き取る上できわめて重要な役割を果たしています。

(『音のイリュージョン』 p.5-8)

参考文献

  • 柏野 牧夫: 音韻修復―消えた音声を修復する脳, 日本音響学会誌, 61(5), 263-268, 2005.
  • Kashino, M.: Phonemic Restoration: The brain creates missing speech sounds, Acoustical Science and Technology, 27(6), 318-321, 2006.
  • R. M. Warren, Auditory Perception: A New Analysis and Synthesis (Cambridge University Press, Cambridge, 1999).
    (付属CDでデモが体験可能)
  • 音のイリュージョン ― 知覚を生み出す脳の戦略 ―」 柏野牧夫著 岩波書店 2010年

デモについて

  • デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
  • 錯聴デモを使用される際には、耳にダメージを与えないよう、お使いのデバイスの音量設定を最適な状態にしてからおためしください。

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知覚的補完一覧

連続聴効果

マスキング可能性の法則(レベルの関係)

マスキング可能性の法則(周波数帯域の関係)

マスキング可能性の法則(両耳間差の関係)

時間領域の生起条件(ギャップ)

時間領域の生起条件(欠落部分の長さ) 

時間領域の生起条件(誘導音と被誘導音の不連続性)

時間領域の生起条件(被誘導音の連続性)

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