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錯視について

竹内龍人

  錯覚(さっかく)とは、人が見たり聞いたりした情報が、実際とは違って知覚(ちかく)される現象をいいます。目で見たときに起きる錯覚を錯視(さくし、visual illusion)といいます。錯視は、ものの形や大きさ、明暗、色、動きなど、ものの見かけ全般にわたってあらわれます。いま見ているものの錯覚だけでなく、見た影響があとに残って、その後の知覚が変わってしまう「残効(ざんこう、aftereffect)」とよばれる錯覚もあります。錯視は、見ている人がたとえ正解、すなわち何が見えるべきか、を知っていたとしても、容易に起こります。また、子供でも大人でも、同じように錯視を体験します。つまり、錯視は、私たちの知識や経験を乗り越えてしまうのです。

ものを見ることは、あまりにもたやすく、あまりにもあたり前にできるので、ふだんは気にもとめることはないでしょう。しかし、錯視という興味深い現象に触れると、ものを見るしくみについて、興味がわいてくるのではないでしょうか?

ものを見るためには、目がきちんと働くことが必要なのはもちろんのことですが、じつは、「脳」の働きが決定的に重要なのです。ものを見るために、わたしたちの目と脳は協調(きょうちょう)して働いており、そのしくみを「視覚(しかく)システム」と呼びます。脳の中でも、とくに大脳皮質(だいのうひしつ)と呼ばれる脳の表面部分は、知覚や認識(にんしき)といったヒトの精神活動において重要な働きをしています。大脳皮質では、50億もの神経細胞(しんけいさいぼう、 ニューロン)が働いていると推測されています。この数はじつに、大脳皮質にある全神経細胞数の2割に達します。私たちがものを見ているとき、脳はたくさんの神経細胞を働かせているのですから、ものを見ることは簡単な活動ではないということが想像されます。では、わたしたちの視覚システム、すなわち目や脳はいったい何をしているのでしょうか?

その答えを教えてくれるのが錯視、すなわち目の錯覚です。

  イリュージョンフォーラムに掲載されている錯視図形の数々を見ると、「目(や脳)は不正確なものだな」といった印象をいだかれるかもしれません。実際に、「錯視とは目や脳のミスである」といった説明をみかけることもあります。しかしながら、このような見方は必ずしも正しくないと私たちは考えます。

目とカメラとは構造が似ている、と言われています。しかし、「見ること」は、外の世界の様子をカメラで写し取る作業だけではありません。画像にはそもそも何が写っているのか、それを「認識する」という作業が必要なのです。しかもそれを瞬時(しゅんじ)に行わなければなりません。視覚システムはこの困難で複雑な仕事を、きわめて巧みな方法により、正確に素早くこなしているのです。

視覚システムが用いている巧妙な方法の数々に、普段わたしたちは気がつきません。ところが、日常生活にはあまり見かけないような特殊な図形を見たときに、視覚システムの「賢さ」が垣間みられるときがあります。それが「錯視」なのです。視覚システムの賢いふるまいの背後では、脳が四六時中、一生懸命に動いています。錯視を通して、私たちはそのような脳の働きを知ることができるのです。

  脳の視覚システムは巨大であり、その全貌はまだまだ謎に満ちています。イリュージョンフォーラムに掲載した錯視に関しても、それが生じる理由がよくわからないものがたくさんあります。このサイトでは、来場されたみなさまが、できるだけ自由に観察できるように、インタラクティブ性を高めることを目指しています。ぜひ手を動かしながら、錯視が生じる理由を考えてみてください。意外な新発見があるかもしれません。また、各錯視図形の下には、新しい知見をもとにした解説を掲載しております。そちらにも目を通していただければ幸いです。

それでは「錯視と錯聴を体験!イリュージョンフォーラム」を、ごゆっくりお楽しみください。