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錯視明るさの対比

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説明

二つの灰色の円の明るさを比べてみてください。黒円の中にある灰色のほうが、白円の中の灰色よりも明るくみえます。でも本当は、二つの灰色の円の明るさは同じです。背景の灰色の明るさとも同じなのです。物理的な明るさ(すなわち、輝度計で測定した明るさ)は同じだと頭ではわかっていても、とてもそうは見えませんね。このような現象は日常生活でも経験できます。たとえば白い服を着たら色黒に見え、逆に黒い服を着たら色白に見えることは、皆さんもご存知でしょう。

下の図では、どのように見えるかを図解しています。黒い円(B)に囲まれた灰色の円(A)は、実際よりも明るく見えます。つまり、(A)の見かけの明るさが、周囲の明るさ(すなわち黒)とは反対の方向に変化しているのです。その結果として、(A)と(B)とのあいだの明暗のコントラストが、実際よりも高まっているといえます。このような現象は、明暗の対比(めいあんのたいひ)と呼ばれています。対比とは「コントラスト」の訳語なのです。

続いて「すすむ」を押すか、画像を左にスワイプして2枚目、3枚目の画像に進み、中の灰色の円のサイズを変えてみましょう。どのような大きさにしても、明暗の対比はのこりますね。中心の円がかなり大きいときでも対比がしっかりと見られます。

明暗の対比には、「側抑制(そくよくせい)」と呼ばれる、視覚(しかく)システムの最も基本的な働きの一つが反映されています。視覚システムとは、「ものの認識」を可能にするための目と脳のしくみの総称です(詳しくは「錯視について」をご覧ください)。視覚システムでは、たくさんの神経細胞(ニューロン)が働いています。明暗の対比には、明るさが違うと、応答が変化する神経細胞群が関与しています。大変興味深いことに、これらの神経細胞群は、お互いに、近くや隣にいる別の神経細胞群と抑制(よくせい)しあっているのです。「抑制」とは、相手の反応を押さえつけようとする働きです。お互いに抑制しあうと、神経細胞群全体の応答が減ってしまうのでは、と思えますが、実際はそうではありません。

もうすこし詳しくみていきましょう。光が当たった神経細胞群(ア)は自身が強く応答すると同時に、回りにある神経細胞群(イ)の活動を抑制します。互いに抑制し合うわけですから、神経細胞群(イ)も、隣の神経細胞群(ア)を抑制しようとします。これが「側抑制」です。

ここで、上図のように、「中心に灰色、周辺に黒色」というパターンがあるとしましょう。そして、神経細胞群(ア)が、中心の灰色に対して反応していると仮定しましょう。その場合、回りにある神経細胞群(イ)には、光が当たらないことになります。なぜなら、回りは黒色だからです。そのため、神経細胞群(イ)から(ア)への抑制は強くなりません。神経細胞群(イ)そのものが働いていないからです。その結果、神経細胞群(ア)は、回りに黒色がない場合よりも、強く反応することになります。なぜなら、隣の神経細胞群(イ)から抑制を受けないからです。そのため、中心の灰色は、回りに黒色がある時の方が、ない時よりも、明るく見えるのです。

回りが黒ではなく、白いときは、中心の灰色は黒く見えますよね。これも、「側抑制」により説明できます。ちょっと考えてみましょう。

答えはこうです。回りにある神経細胞群(イ)には、白い光がたくさんあたっているため、応答が強くなります。そのため、中心の部分に応答する神経細胞群(ア)は、(イ)により強く抑制されます。その結果として、中心の灰色はより暗く見えるのです。このような側抑制の仕組みにより、明るさの違いが強調されます。まさに、「対比」が強くなるわけです。その結果として、中心の見かけの明るさは、周りの明るさに応じて変わっていくのです。

参考文献

  • 「だまし絵練習帖 ~基本の錯視図形からリバースペクティブまで~」 竹内龍人 誠文堂新光社 2010年

デモについて

  • デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。

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