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そうさ方法

  画面の中心を眺めつつ、自分の顔を近づけたり遠ざけたりしてください。すると、描かれたパターンがぐるりと回り出します。この強力な動きの錯覚は、作者の名をとり「ピンナ錯視」と呼ばれています。一番外側に配置されたパターン群は、頭を近づける時に反時計回りに動き、遠ざかる時には時計回りに動いて見えます。外側から二番目のパターン群の動く方向はその逆になります。

  この錯覚の原理を、単純化したパターンを使って説明しましょう。中心点から右に線分があるとします。顔を近づけると、当然ですが、目(網膜)の上では、線分は外へ動いていきます。図1で「実際の動き」と記した矢印の方向です。

ピンナ錯視 図1

  脳には、動きをとらえるために、たくさんの神経細胞が働いています。個々の神経細胞が担当している外界の領域はとても狭いのです。たとえばここで、動いている黒い四角形を捉えようとしている神経細胞Aを想定します。Aが見ている領域を赤い円で囲みました(図2)。

ピンナ錯視 図2

  さて、ここで四角形が上や右に動いたとします。そのときに神経細胞Aが見ている領域は、以下のように変化します(図3)。

ピンナ錯視 図3

  図3から、神経細胞Aが見ている領域は、四角形が上に動こうと右に動こうと全く違いがないことがわかります。つまり、観察している領域が小さければ、動いている物体のエッジがどちらへ進んでいるか、正確にとらえることはできません。これを「窓問題(aperture problem)」と呼びます。神経細胞は窓問題に直面した時、「エッジは、その垂直の方向に動いているのだろう」と仮定するのです。図1の赤い矢印(脳で作り出される動き)の方向です。これは決して正解ではないのですが、的外れ、というわけでもありません。というのも、たくさんの神経細胞の反応の平均をとれば、正しい運動方向になるからです。

  回転する錯視は、このような神経細胞の働きを逆手にとったものといえます。顔を絵に近づけるとき、個々のパターンはその垂直方向、すなわち図4の赤い矢印の方向に動いていると脳は判断するのです。その結果として、パターン全体が回転して見えます。これが「ピンナ錯視」の原理です。

ピンナ錯視 図4