淘汰を用いたマルチエージェント実時間探索の高速化: 協調探索への競争の導入
横尾 真, 北村 泰彦
コンピュータソフトウェア(ソフトウェア科学会論文誌), Vol. 14, No.4, 1996.


複数のエージェントが一つの問題を並行して解く協調探索において, 進化的計 算における淘汰と同様なアイデアを用いてエージェント間の競争を導入したア ルゴリズムを開発した. 本アルゴリズムでは, 状態空間探索問題を解くマルチエージェントReal-Time A*アルゴリズムにおいて, 複数のエージェントが定期的に適合度に応じて確率的 に次世代の子を作る. 適合度はエージェントの現在位置の評価値によって決定 され, より良い評価値を持つエージェントが次の世代により多くの子を残せる. この方法により, 有望な経路に労力を集中しアルゴリズムを効率することと, 多 様性を保ち知識の誤りに対して頑健であることを両立可能である. 例題を用いた評価により, nパズルのように問題の目標が直列化可能な複数の 副目標(serializable subgoals)に分解可能な場合には, エージェントは副目標に関する知識を持っていないにもかかわらず, 本方式により劇的な高速化が得られることを示す. 特に, 本アルゴリズムは48パズルを安定して解くことが可能である. この問題は副目標に関する知識を陽に与えない限り, 従来のヒューリスティック探索アルゴリズムでは現実的な時間内で解を得るこ とは不可能であった.