6/2(木)13:20 - 13:50

通信からコミュニケーションへ

~データの時代におけるパラダイムの変容~
前田 英作(NTT コミュニケーション科学基礎研究所 所長)

概要

   近年、“人工知能(AI)”に対する関心が急速に高まる中で、過度の期待と醒めた批判とが錯綜しています。しかしながら少なくとも、人工知能に関する新しい発見や技術によって、世の中を動かす仕掛けが大きく変わろうとしていることは間違いありません。そして、将来に対する適切な投資を行うためには、人工知能を支える技術の根幹とその潜在的可能性を適確に把握しておくことが必要になります。

NTTのAI技術“corevo™(コレボ)”

  NTTでは、NTTグループのAI技術に対して“corevo™(コレボ)”というブランド名を付けました。さまざまなプレイヤーとのcollaborationを通じて、ともにrevolutionを起こしたいという思いを込めています。“corevo™”は人の知性や思考を模倣するものではなく、人の活動を支援し、人の能力を補完、引き出すAI技術であり、社会課題の克服と産業競争力の強化を目指しています。

知能の市場経済性

  実世界にある森羅万象(人・もの・環境)あらゆるものからデータが取得され、解読、探索(探究)、デザイン(実装)という情報循環の過程を経て、実社会にフィードバックされます。人が書き記した文字、行動、発話、画像、音声、バイタル、筋活動、脳活動など、人に関わるあらゆるデータから知能のモデル化が行われます。その過程で、知能がさまざまな形で分解、再構成されて知能の部品化が進み、市場経済の中で商品として扱われる時代が早晩到来するに違いありません。

コミュニケーションの本質を探る

  実用領域に達した音声認識、機械翻訳から人間の心と身体を読み解くセンシング技術に至るまで、多様な形でAI技術が実生活に入り込んで来る中で、“コミュニケーション”の本質について再考すべき時期が来ています。物理学的な時間の流れは変わらない、生物としての人間の寿命も大きくは変わらない、こうした堅固な制約の中にありながら人間を取り巻く環境は大きく変貌しています。人と人、人と機械とのコミュニケーションの本質について深くそして広く追究し、未来の設計図を描いていきたいと考えています。


【関連文献】
  • [1].[特集]NTTグループにおけるAIの取り組み, NTT 技術ジャー ナル, Vol. 28, No. 2, pp. 6-37, 2016.(http://www.ntt.co.jp/journal/1602/special.html
  • [2].前田英作:情報科学技術を抱きしめて—世界の解読、探索とデザイン([特集]未来への羅針盤としてのコミュニケーション技術), NTT 技術ジャー ナル, Vol. 27, No. 9, pp. 8-9, 2015.(http://www.ntt.co.jp/journal/1509/special.html
  • [3].前田英作:基礎研究は「時代」とともに在り([特集]コミュニケーション科学の新展開), NTT 技術ジャーナル, Vol. 26, No. 9, pp. 12-15, 2014.(http://www.ntt.co.jp/journal/1409/special.html
  • [4].[特集]こころまで伝わるコミュニケーションを支える音声言語と聴覚研究の最前線), NTT 技術ジャーナル, Vol. 25, No. 9, pp. 12-13, 2013.(http://www.ntt.co.jp/journal/1309/special.html


corevo™は、次の4つのAIに大きく分類できます。(1)人の発する情報を読み解き,意図・感情を理解する「Agent-AI」, (2)意識されない人の心と身体を読み解き,深層心理・知性・本能を理解する「Heart-Touching-AI」、(3)森羅万象(物・人・環境)を読み解き、瞬時に予測・制御する「Ambient-AI」、(4)複数のAIが有機的につながり成長し、社会システム全体を最適化する「Network-AI」です。

当日の様子

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