NTTコミュニケーション科学基礎研究所 研究内容紹介 協創情報研究部09

title_research.gif

index.gif

title_innovative_icon.gif
title_innovative.gif
title_Interaction.png

幼児の語彙・文法学習

こどもがことばを覚える仕組みを解き明かす

人間は、言語を操作して、高度な社会的コミュニケーションや概念的思考による問題解決などを行う唯一の動物です。その言語を人間のこどもは生後2-3年のうちにいとも簡単に身につけていきます。現在の計算機科学を駆使しても、コンピュータがこどものように言語を学習することはできません。こうした離れ業をこどもがどのように達成するのかを科学的に解明し、その知見をICT技術と連動させて、育児支援や幼児教育につなげることが、私たちの目標です。

1歳になると、幼児は母語音声から特定の音声配列を抽出し、それと意味を結びつけることで単語を学習していきます。1歳後半になると、効率的に単語学習が行えるようになり、単語を連結させた文も話し始めます。2歳では文法知識も格段に増え、言語による精緻なコミュニケーションを達成します。こうした語彙・意味・文法の各機能の発達過程は驚くほど複雑で、これらの仕組みを解明するために、私たちは実験心理学・心理言語学・自然言語処理・認知科学などの複数の学問分野による学際的アプローチから研究を進めています。

innovative_5_1.jpg

■初期語彙発達に関する縦断データ収集と解析

innovative_5_2.jpg日本全国の養育者よりウェブなどを通じて収集した初期語彙発達に関する大規模な縦断データ(各個人の長期間に及ぶ継続データ)を解析することにより、日本語学習児の早期出現語彙の特徴(意味カテゴリや幼児語の構成など)を明確化したり、語彙爆発(ボキャブラリー・スパート)と呼ばれる語彙学習速度の急激な変化の基礎にあるメカニズムを探る試みを行ってきました。こうした研究から、各個人の発達的プロフィールを正確に捉える統計的な測定・解析手法などを確立し、個性を考慮した育児支援や幼児教育に関する新サービスの提案を行っていきたいと考えています。

■語彙・文法学習メカニズムを探る実験アプローチ

innovative_5_3.jpgまだ十分に発話できない1歳児が、外界の情報と母語の入力情報からどのように語と意味を結びつけ、語彙を獲得していくのかを実験心理学的手法を用いて研究しています。こうした研究から、日本語学習児が生後12-14ヶ月から語と意味の連合を開始し、20ヶ月から形態統語情報を用いて名詞や動詞を抽象的レベルで学習できるようになることを明らかにしてきました。現在は、英語・仏語などの他言語を学習する幼児でも同様の発達過程を経るかどうか、バイリンガル児の場合はどうかなどについて、国内外の研究者と協力しながら、言語間比較研究を精力的に進めています。

■養育者による言語入力を知るための発話解析

innovative_5_4.jpg母語の獲得に大きな影響を与えるのは養育者からの言語入力です。その入力がどんな特徴を持ち、語彙・文法学習にどのように寄与するのかを明確にすることは学術的にも応用の点でも重要です。私たちのグループでは、母子インタラクション場面のデータを収集・解析することにより、育児語の役割や高頻度文フレームの特定、語りかけ構造の抽出などを目指した研究を進めています。こうした研究から、日本語における言語入力の特徴を明確化すると同時に、こども向けの音声対話システム技術の研究開発などにもつなげていきたいと考えています。