NTTコミュニケーション科学基礎研究所 研究内容紹介 メディア情報研究部15

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ダイナミカル情報処理システム

複雑に変動する物理現象を利用した情報通信の科学

さまざまな情報通信システムにおいて、複雑に変動する物理現象を利用したデバイスを活用することで新たな技術の可能性が生まれます。私たちは、複雑現象のダイナミカル理論や情報理論を駆使して、次世代信号処理技術に関する研究を行っています。具体的には、光・電気通信媒体の乱雑現象を積極的に利用した暗号方式、物理乱数生成方式、時空間信号処理技術に関する研究を進めています。コンピュータシミュレーションと実験を含めた総合的な研究手法で研究を行っています。

■将来どのように使われるのか

media_7_5.JPG研究ビジョンダイナミカル情報処理システムの研究成果は、新しい種類の暗号や物理乱数生成器や時空間信号処理方式の開発に利用されます。暗号の開発に関しては、特に、相関乱数暗号への応用が注目されます。相関乱数暗号を利用すれば、複雑に変動する物理現象より生成された相関乱数を用いて、事前に秘密を共有しない人の間で秘密情報を共有できるようになります。この暗号方式は、量子計算機でも解読できない、安全性の高い暗号方式です。一方、物理乱数生成器に関しては、情報セキュリティや科学技術計算への応用が期待されます。半導体レーザに生じる高速な乱雑現象を利用する物理乱数生成器により、絶対に予測不可能な乱数列の生成が可能です。この特長により、究極に安全な情報セキュリティの実現が可能になります。また、時空間信号処理技術に関しては、光電子回路のダイナミクスの非線形応答を用いることで、高速かつ省エネルギーな信号処理の実現が期待されています。さらに、既存の装置と比較して、格段に小型かつ高速な装置の実現を目指しています。以上の技術は、将来の情報通信の基盤技術として期待されています。

■相関乱数暗号

media_7_2j.jpg同期実験系の写真: 駆動レーザが生成する乱雑光の注入により レーザA,Bが同期する通信ネットワークの役割が増すほどに、セキュリティの維持が重要な課題となります。そこで、送信者、受信者、それぞれが相関のある乱数を利用できる状況下で、安全に秘密情報を共有できる方式の実現を目指しています。私たちは相関乱数を生成するために、予測や再現が不可能な物理的乱雑現象を利用することを提案しています。これまでに、盗聴に対する安全性原理の確立、安全性の理論的解析、最適な相関乱数の特徴付け、関連するアルゴリズムの開発を行いました。さらに、実際に相関乱数を生成する方法として、共通の広帯域乱雑光を入力された2つの半導体レーザにおいて、出力光強度が乱雑に変動しながらも類似するという同期現象を利用する方法を提案し、基礎的実験により動作を確認しました。現在は、この同期現象の詳細解明をコンピュータシミュレーションと実験により進めながら、より高い安全性を目指した装置の改良、および、装置の小型化を目指しています。

■高速物理乱数

絶対に予測不可能な乱数列は、安全な情報セキュリティに必要不可欠です。例えば、パスワードや暗号鍵の生成、秘密分散法による秘密情報の分割処理に必要な乱数の生成、量子暗号における鍵系列の生成が挙げられます。その他、科学技術数値計算にも、乱数が利用可能です。そのような乱数列の生成法として、物理現象に基づいた小型かつ高速の乱数生成器が望まれています。そこで、私たちは半導体レーザから出力される光の強さがランダムに高速時間変化する現象に着目しました。これまでに、最先端の光集積回路技術と高周波パッケージング技術を用いて、小型かつ高速なランダム信号発生モジュールを実現しました。さらに、生成される乱数列の予測不可能性を保証する理論を構築しました。本モジュールのランダム出力信号をデジタル化することにより、予測不可能な乱数列の高速生成(毎秒2.08ギガビット)が可能となります。現在は、ランダム信号発生モジュールと高速処理システムを融合させ、生成した物理乱数を計算機のユーザメモリ上に高速ストリーミング供給可能な小型装置の実現を目指しています。

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■リザーバコンピューティング

media_7_6.JPGリザーバコンピューティングの概念図と信号処理の一例(時系列予測) リカレントニューラルネットワークや光電子回路、量子系、ソフトマテリアル等を含む多くの力学系は『共通入力信号同期』と呼ばれる同期現象を示します。この現象は、力学系に同一信号を入力すると、力学系の初期状態に依らず、同一状態になる(=同期する)というものです。興味深いことに、この性質を持てば原理的にはどのような力学系でも情報処理に用いることが可能です。このフレームワークはリザーバコンピューティング(RC)と呼ばれています。近年、上記の力学系によるRCの物理実装研究が盛んに行われており、時系列予測や音声認識等のタスクで高い情報処理精度を示すことが報告されています。その一方で、RCの動作原理には不明な点が多いのが現状です。そこで、本研究では高速な時空間信号処理の実現に向けて、RCの動作原理を理論的に明らかにし、RCの設計指針を与えることを目指しています。