単語親密度の効果
「日本語の語彙特性」には、特性値のデータばかりでな く、各特性値の解析結果や、各特性値が言語処理過程に及ぼす影響を確認する 目的で行った実験結果も掲載されています。ここでは、その中から本データベー スの特性値の中で我々がもっとも重要な特性であると考えている単語親密度と 言語処理過程の関係を紹介します。
<単語親密度とは>
単語親密度(word familiarity)とは, ある単語がどの程度なじみがあると感じ られるかを表した指標です。単語親密度は, ある単語を複数の人に見せたり聞 かせたりして,そのなじみの程度を 1から7までの数字(1:なじみがない -- 7:なじみがある)で答えてもらい, その平均をとって求めます。
<単語親密度が言語処理過程に及ぼす効果>
図2は、語彙判断反応時間、すなわち呈示される文字列 や音声が単語か単語でないかをなるべく速く判断してボタンを押すまでにかかっ た時間を示しています。音声呈示でも文字呈示でもその語彙判断反応時間は単 語親密度が高いほど短くなることがわかります。これは単語親密度が高い単語 であるほど、我々がそれを認識するのが速いことを意味しています。
図3は、雑音中の音声単語に対する認知率を示していま す。図中の”org”で示される結果は、雑音なしの音声です。雑音なしの条件 ではほとんど100%近い認知率であるのに対し、雑音が大きくなる(2.5, 0.0, - 2.5, -5.0 dBの順で雑音が大きい)につれて認知率は低くなりますが、親密度 が高い単語では親密度が低い単語に比べてその認知率の低下が小さいことがわ かります。このことは、単語親密度が高い単語ほど、雑音中でも我々がそれを よく認知できることを意味しています。