物理乱数生成
物理乱数とは
物理乱数とは、物理現象を用いて作られた乱数のことです。 特に非決定論的な物理現象から生成された物理乱数は、予測不可能性や非再現性をもつことができ、 情報セキュリティなどにおいて必須の技術となっています。 非決定論的な物理現象とは、 確率的な要素が含まている物理現象であり、 典型的なものとして、 量子現象、熱雑音、誤差などがあります。 2014年時点での「物理乱数生成に関する最近の動向」です。
カオスレーザによる物理乱数生成
戻り光半導体レーザが生成するカオス信号を元にして高速に物理乱数を生成することができます。 戻り光半導体レーザとは半導体レーザから出た光が再度元の半導体レーザに戻るような仕組みを持ったデバイスのことです。 戻り光により半導体レーザの挙動は不安定化しその光強度は高速にカオス的にゆらぎます。 これは、Lang-Kobayashi モデルにより記述されます。
このカオス信号を適切なサンプリング間隔と解像度でデジタル化することにより物理乱数ビット列を生成することができます。
高速物理乱数生成に関して、理論的側面、実験的側面、システム化の側面から研究を行っています。
さらに詳しくは、CS研オープンハウス(OH)での説明をご覧ください
(
OH2017、
OH2016、
OH2015、
OH2013、
OH2011
)。
ガルトンボード
ガルトンボードは板に釘を打ちつけた装置です。
例えば、これ、です。
これを垂直に立て上部から球を落下させると、球は釘とぶつかり最終的な落下地点は統計的に正規分布を持つようになります。
ガルトンボードの具体的な”動き”は、例えばこの動画を見ると分かりやすいと思います。
S. F. Galton, Natural Inheritance (Macmillan, New York, 1889)において、
正規分布を生成するデバイスとして取り上げられ、
その後、Probability by Mark Kacによっても考察されています。
ガルトンボードをモデル化し、なぜ統計的な分布をもつようになるかの考察をおこないました。
ガルトンボードの基本的領域を考え、この上部から様々な初速度をもった質点を落下を自由落下させたとき、
質点が領域内全体にちらばる様子が
ここで
みてとれます。
詳しくは、
ガルトンボードの予測不可能性についてや
Randomness in a Galton board from the viewpoint of predictability: Sensitivity and statistical bias of output states
をご覧ください。
物理乱数リンク集
NIST random bit generationニューラルネットワーク
リカーレントニューラルネットワーク
リカーレントニューラルネットワークとは再帰結合をもつニューラルネットワークのことである。 このため時系列信号のような系列の依存性があるデータを扱うときに使われる。
有限オートマトン
有限オートマトンとは、入力記号が与えられるとこれに依存して状態を遷移し、その状態に対応する記号を出力するオートマトンである。 従って、ある記号列が入力されるとこれに対応する記号列が出力される。
リカーレントニューラルネットワークによる有限オートマトンの模倣
複雑ネットワーク
複雑ネットワークとは、 とても規則的でもなく、とでもデタラメでもない、 中くらいの規則性と中くらいの乱雑さの構造をもったネットワークのことです。 実は、世の中にあるネットワークは、複雑ネットワークになるものが多いといわれています。 典型的な複雑ネットワークとしてノードの結合次数分布がべき的なものがあります。
- 複雑なネットワーク構造をもつ通信ネットワークの混雑回避の研究
- 投稿行動の複雑ネットワーク的解析の研究
非線形同期現象
半導体レーザに外部から別の半導体レーザ光を入力すると、レーザ出力光の波長が入力光のレーザは波長に一致する injection locking という現象がみられます。 このとき入力光と出力光の光位相が位相同期することを実験的に確かめました。
共通のランダム光が入力された2つのレーザはその出力光の波形が同期することを実験的に確かめました。
共通ノイズによりリミットサイクルは同期を引き起こします。
リミットサイクルとは安定な周期軌道をもつ力学システムのことです。
あまり強くない外力の加わったリミットサイクルは、軌道があまり変わらないという前提において、位相縮約近似という方法により解析ができます。
ノイズを含む微分方程式の厳密な取扱いには注意が必要です。
雑音誘起現象
雑音に埋もれている信号にさらに雑音を加えることでその信号が検出できるようになる確率共振と呼ばれる現象が知られています。 カオス揺らぎによっても同様の現象がみられることを見いたしました。 これを決定論的確率共振と呼んでいます。
備忘録