ICT分野においては、これまでブロードバンド、ユビキタスといった掛け声のもと、まさに加速度的な勢いで技術が進歩し続けてきました。今や、世界規模で情報が駆け巡り、Web上の情報であれば瞬時に検索ができるようになりました。また携帯電話に関しては、モバイル情報機器として考えつくあらゆる機能が実現されています。今後の技術開発はどこに向かうのでしょうか。
大きな方向性としてあるのは、人間や環境を重視し、持続可能な社会をめざした技術開発です。これに対してCS研では、人間科学や社会科学を踏まえた環境的視野の中で考える研究開発コンセプト「環境知能」を提唱し、具体的には専門的な要素技術を融合し、未来のコミュニケーション環境の創造をめざす研究を推進してきました。
今回は、これまでの研究を通じて見出しつつある新しい課題や可能性をふまえて、これから必要となる新たなコンピューティングを提案します。環境知能の実現には、さまざまな場面における多様な要素が複雑に関係し合うダイナミックな世界を扱える基本技術が必要です。具体的には、各種の場面においてさまざまな情況を常にセンスし(感)、一連の流れの中で、ダイナミックに状態を把握・分析し、どのような状態であるかを学習に基づき確率的に類推する情況コンピューティングと、さらにその処理と呼応して、言語処理を中心に様々な知識を駆使し(知)、情況に応じた賢い処理ができる知識コンピューティングです。さらに、人のQOL(Quality Of Life)を高めるために欠かせない人間・社会情報科学の研究に基づく知見も合わせ、人の心に快・驚・愉を生みだす環境の実現をめざして(心)、研究を進めています。