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何が見える?

シマウマのしま模様に注目してください。色がついているのは、それぞれ輪郭(りんかく)の部分だけなのですが、輪郭で囲まれた内部にも、色がついているように見えます。「水彩錯視」とよばれています。スライダーでパターンの大きさを拡大・縮小したり、マウスでドラッグして動かすことができます。パターンをとても大きくすると、水彩錯視は消えてしまいます。

どうしてそう見える?

  「水彩錯視」は2001年に報告されました。発表された錯視図形はもっとシンプルなのですが、ここでは「シマウマ」を描いてみました。1ページ目の画像では、2頭のシマウマがいます。シマの部分をよく見てください。淡い色がついているシマと、無色(つまり白)のシマが交互に並んでいるように見えませんか?

  ここで、左上のスライダーを一コマずつ動かして、しま模様の部分を観察してみましょう。しばらくの間は、しま模様には淡い色がついているように見えます。ところが、スライダーを一番右まで動かしたら、どう見えるでしょうか?もうおわかりでしょう。実は、しま模様の内部には、どこにも色は塗られていないのです。しま模様の輪郭が、淡い黄色と濃い紫色によって塗られているだけなのです。内側の淡い色(この場合は黄色)がにじみ出しているに見えるため、「水彩錯視」と呼ばれています。

  では、左右のシマウマはどこが違うのでしょうか?輪郭の部分で、色のつきかたが左右で逆になっています。そのため、色がついて見えるしま模様と色がないしま模様が、左右では反転しているのです。シマウマはそれぞれマウスでドラッグして、好きな場所に配置できます。比較しやすい場所に移動して、スライダーを動かして、錯視を観察してみましょう。

  つづいて、「すすむ」ボタンを押すと、今度は、白と黒のくりかえし模様を背景に、一頭のシマウマが描かれています。ここでも、スライダーを使うと、拡大した画像を見ることができます。シマウマは、マウスでドラッグして、好きな場所に動かすことができます。シマウマの輪郭の色は、先ほどは「紫色と黄色」ペアでしたが、今度は「青色と黄色」のペア。背景が白色の場合は、黄色の輪郭が内側にある部分では、しま模様全体が黄色く色づいてみえます。つまり、1ページ目と同じ錯視があらわれています。ここで、背景が黒の部分に注目しましょう。水彩錯視の出方が反転しています!青色が、黒色の内部ににじみでているように見えます。スライダーで拡大すると、錯視は消えてしまいます。ちょうどよい大きさで観察してみましょう。シマウマをマウスでドラッグしてみてください。背景が白から黒、あるいは黒から白に変わると、水彩錯視がすぐに反転する様子も観察できます。背景が黒色のときに見える青色の錯視は、ネオンカラーのようでとても美しいですね。

  水彩錯視がおこる原因の一つに、明暗と色彩に対する感度の違いがあります。目から入ってきた光は、目の奥にある網膜に投影されます。網膜には錐体 (すいたい)細胞と桿体(かんたい)細胞と呼ばれる光センサーがあります。桿体は基本的に夜だけ働くので、ここでは考えません。錐体には3種類あります。 一般には、赤、緑、青錐体とよばれていますが、より正確に (Long)に応答する「L錐体」、中波長(Middle)に応答する「M錐体」、そして短波長(Short)に応答する「S錐体」、となります。 錐体と桿体はそれぞれ、下の図のような姿をしています。赤、青、緑の色をつけた錐体細胞の形はたしかに錐体なのです。赤がL錐体、緑がM錐体、青がS錐体 です。もちろん実際には色はついていません。灰色にぬった細胞が桿体です。

  網膜には錐体と桿体がしきつめられています。「補償光学(ほしょうこうがく)」とよばれる新しい技術を使うと、錐体や桿体がどのように配置されているか、その様子を観察することが出来ます。下の図は、桿体が存在しない中心視野に対応する網膜を模式的に描いたものです。

錐体・桿体

  この図では、L錐体を赤色で、M錐体を緑色で、そしてS錐体を青色で表しています。もちろん実際の錐体には色はついていません。

  明暗の情報は、おおざっぱに言ってしまえば、このような光センサーの一つ一つでとらえることができます。しかしながら、色彩の情報をとらえるには、3種類のセンサー(錐体)全てが必要なのです。つまり、分解能(ぶんかいのう)は、色彩の方が明暗より劣っている、ということになります。明暗が一つですむところ、色彩には三つ必要なわけですから。色がにじんで見えるのは、このような空間的な解像度(かいぞうど)の低さにあると考えらます。

  しかしながら、視覚システムはとても巧妙に働いており、色のにじみを、より分解能が高い明暗情報が食い止めるようなしくみになっています(「ネオンカラー効果」の説明をごらんください)。そのため、ふだんは色のにじみに気がつくことはありません。水彩錯視のような特別な状況を作ると、色彩情報がどのように処理されているか、その しくみを垣間見ることができます。

    【参考文献】
  • Pinna, B., Brelstaff, G., and Spillmann, L. (2001) Surface color from boundaries: a new ‘watercolor’ illusion. Vision Research, 41, 2669-2676.
  • だまされる目-錯視のマジック-」(子供の科学サイエンスブックス)  竹内龍人 誠文堂新光社 2009年