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RESEARCH INTERESTS 

     ヒトは感覚入力を基に外界を表現し,眼・腕・足などを動かすことで外界に影響を与えます.「コップに手を伸ばす,車を運転する,テニスを楽しむ...」私たちの日常動作 は 全てこの感覚運動生成処理の元に成り立っています.その処理はもちろん脳が行っているわけですが,どのような脳部位が,どのような情報を使って, どのような計算過程で「ヒトのなめらかで高度な運動生成」を作り上げているのか,まだまだ大きな謎が残されています. 我々は,心理物理実験,計算論,神経生理学など様々な手法を駆使して,ヒトの感覚運動生成を理解し,ヒト知性の本質に迫りたいと考えています.

    また,スポーツスキルの向上,リハビリに基づくQOLマネジメント,より使いやすいマンマシンインタフェースやヴァーチャルリアリティ の設計などを考えると,ユーザである「ヒト」をより深く理解することが必要不可欠であるように思えます.「ヒト感覚運動生成」の本質的理解を通じ て,実社会の問題にアプローチします.

現在は,以下に示す3つの研究プロジェクトを推進しています.


潜在的な視覚運動生成

    従来,視覚運動生成の理論は「目標位置表現,意思決定,運動計画,運動遂行」という逐次処理を前提に考えられてきました.多様な運動を実現するためにこのような処理は必要 でありますが,階層性が高いほど脳の計算コストとしては負荷がかかります.野球やテニスでボールを打つ際に,我々はコンマ何秒の世界で,自分の体 の動きを正確に捉え,動くボールにアプローチしなければなりません.実社会における巧みで高速な運動生成を考えると,計算コストの高い逐次処理で は限界があるように思えます.

    私たちは,視覚情報をダイレクトに利用することで,意思決定や運動計画を必要としない高速な視覚運動生成が実現されていることを一連の研究で示してきました.  具体的には,腕運動中に背景視覚運動刺激を提示すると,その刺激方向に無意識・超高速な腕修正動作が自動的に生 成されます.体が動く際に生ずる背景視覚運動刺激を脳は上手に利用することで,計算コストを高めることなく,適切に外界に働きかけていることが予 想されます.

関連論文

  • Abekawa N, Gomi H (2015) Online gain update for manual following response accompanied by gaze shift during arm reaching. J Neurophysiol 113:1206–1216.
  • Gomi H, Abekawa N, Shimojo S (2013) The hand sees visual periphery better than the eye: motor-dependent visual motion analyses. J Neurosci 33:16502–16509.
  • Abekawa N, Gomi H (2010) Spatial coincidence of intentional actions modulates an implicit visuomotor control. Journal of neurophysiology 103:2717–2727.
  • Gomi H, Abekawa N, Nishida S (2006) Spatiotemporal tuning of rapid interactions between visual-motion analysis and reaching movement. The Journal of Neuroscience 26:5301–5308.

眼と腕の協調運動機構

    眼と腕は別々に動くわけではなく,適切なタイミングで協調的に動いています.このような協調動作は,従来,意識を伴う随意的運動で観察 されてきましたが,意識を伴わない無意識的な運動において協調関係は成り立っているのでしょうか?私たちは,目標を追従する無意識・高速な腕修正 動作であっても, 適切な協調関係が成り立つことを明らかにしました.また,協調関係は常に固定的なものではなく,課題・環境に応じて柔軟に調節されうる点についても着目しています.

関連論文

  • Abekawa N, Gomi H (2014) Understanding the coordination mechanisms of gaze and arm movements. NTT Technical Review 12:1–8.
  • Abekawa N, Inui T, Gomi H (2014) Eye-hand coordination in on-line visuomotor adjustments. Neuroreport 25:441–445.

身体情報表現の構築

    外界の対象物位置を,自分中心で表現することを自己中心的定位と呼びます.たとえば,テニスを考えてみると,ボールの位置を自分に対して右か左かを判断し, フォアハンドかバックハンドかを選択する必要があります.自己中心的定位を行う上で,自身の体中心("body-midline")表現が必要と なりますが, その表現は種々の感覚情報を利用して統合的に表現されるものと考えられます.私たちの研究では,前庭情報に影響を与える電気刺激(Galvanic vestibular stimulation:GVS) を用いることで,体中心表現の構築に前庭情報が関わっていることを直接的に明らかにしました.

関連論文

  • Abekawa N, Ferre E, Gallagher M, Gomi H, Haggard P(2018) Disentangling the visual, motor and representational effects of vestibular input Available online 12 April 2018. Cortex

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