内容:本展示では,最近の取り組みとして,高次元で複雑なデータの隠れた構造や特徴を可視化したり,その構造や特徴をうまく活用して効率的な処理をしたり,データの背後にある人間の行動パターンを抽出したり,などに焦点をあてた, 以下の3つのテーマを中心とした展示をご覧いただきます.
大規模データ可視化技術(隠れた構造や特徴の可視化)
Web上の情報等,大規模なデータに潜むデータ間の関係を,グラフ,もしくは,ネットワークとして可視化することは,人間の直観力を活かした理解,発見を支援するためにも重要です.ネットワークの可視化では,ノードの接続関係に基づき各ノードにポテンシャルを付与し,系全体のエネルギーを最小化する方法が良く知られています.我々は,このエネルギー最小化をアルゴリズムとGPGPUを用いた並列処理の両面から効率化することによって,数千から数十万規模のネットワークを高精度かつ高速に可視化するアルゴリズムを提案しました.さらにこれを拡張し,各ノードに大きさを持つラベルが付与されている場合に,各ノードに楕円型ポテンシャルを与え,ラベルが重ならないように配置する方法を提案しました.図1はその可視化例です.本技術はgooラボで実験中のBLOGRANGER TGのタグ可視化エンジンとして使用されています.
図1 ラベル付きネットワークの可視化例
可視化座標の最適化計算過程(ムービー)
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可視化座標の最適化計算過程(3次元のデモ)(ムービー)
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参考文献など
- 松林 達史,山田 武士
「階層的独立固有時間刻み法によるグラフ可視化計算の高速化」 情報処理学会論文誌:数理モデル化と応用, Vol.48, No.15, pp.126--136, (2007) . - 「大規模ネットワークの高速可視化手法」
- 松林 達史,山田 武士,藤村 滋,藤村 考
「固有楕円ポテンシャルを利用したラベル付きグラフ可視化の座標計算」, 情報処理学会論文誌:数理モデル化と応用, 掲載予定 - BLOGRANGER TG
大規模コンテンツ類似探索技術(構造化による高速処理)
World Wide Web上の文書や画像を対象としたキーワード検索に代表されるように,大規模で多様な情報(コンテンツ)の中から必要となるコンテンツを効率良く探索する技術は,必要不可欠な技術の一つです.中でも,コンテンツ自体を入力(クエリ)とし,クエリに全体として類似するコンテンツ(ターゲット)を見つける類似探索技術は,今後ますます多様化するコンテンツ探索に,特に有望です(図2).そこで,類似探索技術の索引構造をグラフ(ネットワーク)とみなし,スモールワールド特性を有する複雑ネットワークを利用した高速類似探索技術を提案しました.提案法は,約130万件の文書データの類似探索において,0.2%程度のデータと類似度計算を実施だけでターゲットを高速に発見できます.また,索引構造としてネットワークを用いることにより,検索結果として抽出した類似コンテンツ間の関係を,リンク構造に基づき可視化できます(図3).また,単語(文字列)及び画像データ等に関しても同様に高速探索可能です.
図2 ニュース記事の探索例

図3 探索結果のネットワーク表示
参考文献など
- K. Aoyama, K. Saito, T. Yamada, N. Ueda
Complex-network guided fast similarity search. (投稿中)
複数対象トラッキング+クラスタリング(行動パターンの抽出)
動画像の内容理解は,動画像コンテンツの検索や購買行動の解析,あるいは監視カメラデータの自動処理などのために重要な技術である.本研究では動画中の複数人物の行動を自動的に理解する技術の開発を目標に,さまざまな歩き方をする複数の人物を同時に追跡する問題に取り組みました]. ここでの問題は,シーン中に存在する追跡対象(歩行者など)の数と位置,そして現在の運動モデルをそれぞれ推定することです(図4).しかし既存のトラッキング手法では,「増減する対象数の推定」と「運動モデルの推定」は二者択一,つまり同時に推定することが不可能でした. そこで,複数対象トラッキングのモデルと,ダイナミクスのクラスタリング手法を統合し,未知数ターゲットの追跡と未知ダイナミクスの同時推定手法を提案しました.本手法の開発によって,対象数の増減,対象の運動モデルについて事前の情報がない一般の動画像データに関しても解析が可能となります.
図4 物体の追跡と運動モデルの推定
参考文献など
- Ishiguro, K., Yamada, T., and Ueda, N.,
"Simultaneous Tracking and Clustering Unknown Number of Objects", Proceedings of the IEEE Computer Society Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR08), 2008, (in press)