( Einglish version is here. )

GVS (Galvanic Vestibular Stimulation) Interface

私たちは平衡感覚の変化を提示するインタフェース技術の研究を行ってきました(大阪大学前田研究室 参照).この技術は,左右の耳の後ろ(頭部乳様突起部)に電極を装着し,微弱電流を流すと,装着者は陽極側に身体が傾いたと感じる現象を利用したものです(Galvanic Vestibular Stimulation,以下GVS).さらに,この刺激を歩行中に与えると,歩行方向が電流の陽極側に変化します.GVS技術は,普段人工的に変化させられることが少ない平衡感覚に対して,小型軽量な装置で情報提示を行うことができます.

Hold your wavering identity

現代社会において人間は,多くの情報に曝され,意識的にも無意識的にもそれらの影響を受けて行動をしています.例えば,何か買い物をするにしても,前の晩に見たテレビだったり,ふと目に入った広告だったり,様々なものが関与しています.

そう考えたとき, 自分が選んだものは,実は,誰かに選ばされたものでもあるのです.普段,私たちは「自分で主体的に行動しているつもり」になっていますが,むしろ,情報過多な社会では,環境の中で揺れ動く自己をきちんと見つめていくことが重要となると考えられます.

本作品『Save YourSelf !!!』では,自分の主体性のメタファとして自分の身体と感覚的につながれた小さな人形を考え,それを守り,進んでいくという体験をデザインしました.人形には傾きセンサが取り付けられ,その傾きの変化によって,体験者は人形と同じ方向の揺れを体感します.人形は小さな水槽の上に浮かべられており,体験者は,水の上で揺られる自己の分身を守りながら歩いていきます.

Beyond the Interface...

GVS技術を工学の分野だけでなく,芸術表現やエンタテインメント分野で応用する試みも行っています.GVS技術が新たな情報提示装置としてだけでなく,人々の心を豊かにするような,精神的な価値を生み出すことができればと考えています.

Hideyuki Ando, Tomofumi Yoshida, Taro Maeda, Junji Watanabe
junji.watanabe.sp@hco.ntt.co.jp

Photo model: Satoko Wakai