研究テーマ「情報デザイン」

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情報デザインとは?

まずデザインとはどういうことなのであろうか.日本で考えられるデザインの対象とする領域と
はイメージが随分異なる.

国際情報デザイン研究所(以下IIID)では,「デザインとは問題点の発見であり,創始者が知的
かつ創造的な試みを行なうことであり,図式や仕様書などの設計図や図面でそれら問題点や
試みを明らかにしていくことである」と定義している.
そして,IIIDでは,「情報デザインとは,表象する環境やメッセージの内容といった,ユーザの目
的となっている問題を解決に導くための定義であり,計画であり,具現化することである.そし
て,この点に立脚してIIIDでは視覚情報に焦点をあてる.将来的には視覚情報以外の情報も
対象に含めることを想定している」と定義している.

つまり,情報デザインというのは,方法論を積み重ねることで新しい概念が生まれる可能性を
秘めているものなのである.現時点では問題の明示と解決に視覚化というデザインの手法を
用いているが,より分かりやすい表現を求めて手法の拡張を視野にいれていることも特徴とし
て掲げることが出来よう.


とりまく環境を概観する

日本で開催された国際会議としては,1999年東京で開催された「VisionPlus7」がある .「情報
デザインからコミュニティの構築を考える」がテーマであった.本拠地オーストリア以外での開
催は第5回のカーネギーメロン大学(CMU)の開催に次いで,2回目である.
2000年には第8回がウィーンで開催された. "Turning Information into Corporate Knowledge
(共同体が知識を共有する方法について)"がテーマとなった.
近年では「情報・デザイン」をキーワードとした学科が各地の大学で新設されている.いくつか
を事例として掲げることとする.

多摩美術大学では情報デザイン学科が1998年に設置された.「情報を美しい形にする」「情報
を生きたアートにする」「情報を動く空間にする」「情報を確かな思想にする」「情報を時をこえた
知恵にする」を標榜している .カリキュラムは「統合としてのデザイン」「知のネットワーク」「思
考の組み立て」にカテゴライズし組み立てられている.対象とする領域は,表現領域を言語,
平面,立体,空間,身体という5つの表現手法に分類,そしてその目的を環境共有,個人所
有,複製生産,デジタル情報という4つに分類し,それらをマトリクス化した対象のデザイン手法
を修得することとなっている.

武蔵野美術大学にはデザイン情報学科が設置されており,マルチメディアリテラシーを習得
し,高度な情報創造・マネージメント能力を持つ新しいタイプの専門家養成を目標として授業が
進められている .

京都造形芸術大学では1998年から情報デザインシリーズの書籍の刊行を行っている.これは
情報デザインの方向性を力強く示しているものである.21世紀に向けてデザインの対象とする
領域が拡張してきていることと,デザイン手法に変化が起きている現象について,今までのデ
ザインと対比しつつ我々に的確に伝えている.情報デザインの役割を「情報編集」という非常に
端的なことばで表現している .

九州芸術工科大学では,芸術や文化についての深い理解とコミュニケーションの形成に関す
る科学的な専門知識を有し,社会に新たな価値を創出することのできる総合力と企画力を備
えたメディア環境設計の専門家を養成すると宣言している.

岐阜県立国際情報芸術科学アカデミー(IAMAS)では,開校以来,本来のカリキュラムに加え
て,学校内のアトリエに客員研究員としてアーティストを招聘し,制作の過程から作品発表まで
を学校・学生・アーティストが一体となって共有するプログラムである「アーティストインレジデン
ス」を毎年実施するほか,隔年で内外のメディアアーティストの秀作を集めた展覧会,シンポジ
ウムを主催し,最先端の表現技術・概念について理論と実践(表現,発表の場へのプロジェク
ト参加を通して)双方から学ぶ理想的環境を実現している.

美術大学以外でも同様の動きはある(東京大学学際領域学環,慶應義塾大学SFC,etc…).
これら大学共通の特徴は,大学の学問体系が持つ縦割りのカリキュラム編成から脱却し,横
断的な知識と技術をプロジェクト的に駆使し今日の様々な問題課題を解決しようという試みで
ある.

今日の先に揚げた事例は過去にも存在するのであろうか.1928年にワイマール共和国のデッ
サウで誕生したバウハウスに端を発し,今日の組織では,ZKM,アルスエレクトロニカ・センタ
ー,NTTインターコミュニケーション・センター(以下ICC) などを挙げることができる.

そもそも古来アートとテクノロジーというのは不可分のものであった時代が長く続いていた.分
類区別をするようになったのは人類の歴史上では産業革命以後の,最近の話しである.バウ
ハウスの創設当初にあるカリキュラム体系図には,中心には建築がありその周囲に様々な表
現技法のカリキュラムが存在している.すべての学問の集約された,行き着く先が「建築」であ
る.

この構図は今日では中心となるものを「建築」から「IT」に置き換え,デジタルバウハウスとして
現在によみがえらせる運動が世界各地で発生している.
他に,分断された領域の総合化ということを実現した元祖としてワーグナーを見ることもできよ
う.バイロイト祝祭劇場で楽劇という形式に芸術を総合化する試みは,時代を超えて圧倒され
る.欧米ではCyber Operaという表現でマルチメディアの未来を語る事も多い .

1979年からオーストリアではアルスエレクトロニカ・フェスティバルというメディアアートの祭典が
毎年行われている.1997年にセンターがオープンし今日に至っているが,古くから電子技術を
用いた新しい芸術活動を指向する者にとっての聖地として目標となっている.

1990年に電話100年記念事業としてプロジェクトを開始したICCは,芸術と科学技術の融合を
目指し,新らしい表現の形を模索するセンターとして97年に開館した.その取り組みには,既
存の学問領域では見落としがちな新しい価値の発見を目標に展覧会以外にも,「テクノカルチ
ャー・マトリクス」等の研究会活動とワークショップの取り組み,新たなる知見を探求する機関
誌「季刊InterCommunication」の刊行などを続けている.


以下では2つの実際に情報デザインへの取り組みとしてあつかった事例を簡単に紹介す
る.

事例その1「情報デザインワークショップ
1999年9月にNTTコミュニケーション科学基礎研究所と多摩美術大学による共同ワークショップ
を実施した.ActingOutという手法を基に,21世紀のコミュニケーションメディアを発明するとい
うテーマで開催した.

Acting Outとは,我々が見たもの,感じたものをスケッチブックに描いて情報を共有するのと同
じように,見た出来事,感じた出来事を空間上にスケッチして,人々の間で情報として共有する
ための手法である.ともすると,パフォーマンスをしている様に見えてしまうのだが,従来のス
ケッチによる方法では人間の経験の時間経過にかかわる部分の表現がうまくできないという
問題点がある.形にすることが難しい現象の表現をActing Outで本当に表現することが出来る
か試してみることが,このワークショップの目的である.

ここで用いたActing Outは以下のようなプロセスを経て経験を表現に転化しようと試みている.
・共通のテーマとなりうる問題を語り合う
・シナリオを考える
・シナリオに基づいて身体で表現してみる
・一緒に表現するための環境をデザインする
(必要な道具をはりぼてで作る)
・表現してみる
(未経験のものを可視化してみる)

短期間のワークショップであったので,設計は手書き,製作物はボール紙+はさみ+模造紙
+マジックという限定されたものを用いた.これらの道具を用いて自ら体験したものに形を与え
て表現をするのである.

テーマはワークショップ開始時点で共通の体験を形にすることで,「学校の思い出」にまつわる
ものということになった.

今までにはないものをデザインできる可能性を体験する機会となったが,共通の体験をしない
と一緒にデザインを行うことは難かしい,絵を描く事と違い上手下手という差がないので,メン
バーは思った以上に対等にディスカッションができた.体験をデザインするための決定的手法
はまだわからない,という知見が得られた.問題解決の手段として,従来のデザイン手法を用
いて形に表わす部分があった.その結果,新鮮なアイデアをデザインし始めたはずなのに,今
までのデザインの枠の中に収束してしまう危険性を持っていることも確認された.


事例その2「机を作る」
そのワークショップの成果であるデザインコンセプトを基に,テーブルを作ることになった.
ワークショップの課題では,グループ学習で様々な思い出,記憶をテーブル上に任意に表示
し,それらの情報を編集して新たなコンテンツに仕上げるということをActing Outによりシミュレ
ーションした.

学校の思い出を語るシチュエーションから,社会人の情報交換共有のためのテーブルへと環
境設定を変更した.キーコンセプトは「学校の思い出の再編集」から「鶴橋の焼き肉屋」へ変更
されていった.様々な記憶をテーブルに出すと言うことを,焼き肉を焼いて食べる行為になぞら
えることとした.このテーブル製作のプロセス自体が情報デザインとしてとらえることができる部
分は以下のようなところにある.

・やりたいことと適材適所
 やりたいことは決まっているのであるれば,その実現のためには,専門的な知識を持った以
下のような6種類の人の協力が必要である.
1)仕様を固める人すべての話をそれなりに理解して整理する人物.この人物が見積もりを間
違えば,個々の仕事がどんなにすばらしくても完成しないという悲劇を生むことになる.プロデ
ュースという職種に該当する.
2)設計図を作成する人物.この人物は2種類の人物が必要である.その1は基本設計として
の図面を引ける人物.この人物はこの机がどのようなシナリオで使われ,またそのために必要
とする機能はどのようなものかということを明確に形に表す必要がある.その2の人物はその
機能を実現するためにその素材を用い,耐久性と操作性を兼ね備えた部品と加工を実現する
ための準備が必要である.
3)機能を実現するためのハードウェアの選定をする人物.
4)機能を実現するためのソフトウェアの選定および,ソフトウェアの設計,プログラミングをす
る人物.
5)実際に組み立て製作をする人物.
6)記録と予算管理,進行管理をする人物.

これらを一人で行うことは不可能であるが,いくつかの仕事を兼務することは可能であろう.よ
り高度なものを作ろうと考えた場合,2)〜5)のプロフェッショナルを集めればよりよいものが
作れるのであろうが,各々の主張を調整する必要もあり,使用しているコミュニケーションのツ
ール,単語などにも調整作業が多様に存在しているので,必ずしも専門家が集まればいいも
のが出来るということにはならないのである(もっともその道の第一人者を集めるだけの予算も
ないというのがそれ以前の現状がある).
通常この手のものを作る場合に,予算と時間との兼ね合いで諸々の設定が決まるのである
が,あいまいな中にも,下に示したような事項を決断する必要があるのである.

・チーム編成
年に1度あるかないかの仕事のために専属のスタッフを抱えられるような人・組織などいない.
映画の製作手段を事例に考えると,黒沢組というグループで作ればあれだけの品質が実現で
きるのである.しかしその黒沢組は1日にして出来たのではなく,何十年もの年月を経て蓄積
されたノウハウがあってのことなのである.シナリオという形式を中心に実現できるとも考えら
れるが,表現するためにシナリオだけでは不足する,空間に関しての情報共有が存在している
のである.
私のように,自らモノ作りをする技術を持たず,制作チームを持っていない者が何かを作る場
合には,毎回異なるチーム編成で臨むという前提で以下のことを考えないといけないのであ
る.あうんの呼吸とか,職人魂というようなものではなく,期間3ヶ月,週1回程度の打ち合わせ
で必要な情報を共有するための「会議のやりとり=プロトコル」「表現方法」といったものの開
発が必要である.

・共通の表現ツール
机を製作するのなら,仕様書(実現したい機能)と設計図(基本設計図)を基に,関係するメン
バーでミーティングを重ねることとなる.仕様に基づいて想像を膨らませてシミュレーションした
結果,実現不可能な部分についてどの順序で仕様を変更するのか.全体としてのバランスを
絶え間なく確認をすすめていかないと,とんでもな結末が待っているのである.最悪の場合,バ
ベルの塔のように,完成できないのである.想像と実現のギャップを埋める共通の表現するた
めのツール(製図,ことば,プログラム等々)が必要である.

・時間上での存在感,進化と適応力
あるコンセプトを基に完成したモノは,時代のパラメーターによってどのように機能と形をかえ
ていくのであろうか.コンピュータソフトではver.3から使えるものになるという神話すら存在して
いるが,これは実際のユーザの手に委ねられて製品が完成していく.という考え方と,時代の
パラメーターをその製品が変えてしまい,それに対応するべく自らも変革する要素を持ってい
ないといけないということとも考えることが出来るのではないか.生物の進化システムにならうと
すると,人間の作ったものも,多様な選択肢のものが社会に存在していて,それらの一部のも
のが,社会の多様な変化に対応するために,多量の淘汰されるべきものも存在しているという
ことになるのであろうか.



記述(または表現)の方法について
デザインから情報デザインへの変遷の中で,取り扱う対象物に大きな変化が生じている.コン
ピュータの劇的な進化によって,我々が表現手段として利用できるメディアに革命が起きたこと
がその一因である.

「時間」という概念をデザインに取り込む必要があるのである.時間には,短期の時間と長期
の時間が存在している.短期的とは情報デザインにより解決を提示され,問題解決するまでの
流れを単位として考える.

長期的と言った場合には,その解決を試みた結果を蓄積していくことによってさらに別の問題
が発生する.そこまでを含めた変化を考慮に入れることとする.

情報デザインを考える上で,この時間という概念に加えて,3つの重要な要素(もしくはパラメー
ター)が存在すると考えている.カテゴライズ,テクノロジー,インタフェースである.

カテゴライズとは,この情報デザインで取り扱う領域をどこまでにするのか,何を所与の条件と
して,何について解決を試みるのか.ということを決めておくことである.その取り扱う領域は時
事刻々と変わるものかもしれない.

テクノロジーとは,その問題解決に用いる技術を知る事であり,その技術を利用することであ
る.実現できないデザインや,機能に意味のないデザインをしても情報デザインでは意味がな
いのである.

インタフェースとは分類され,問題解決の試みられた対象物同士をつなぐ「モノ」である.人間と
機械のインタフェースに限らず,コミュニティ間,機械間というように,対象としているモノをどの
ように接続するか,物理的,論理的接続方法を決定することである.

情報デザインで取り扱う「表現のための素材」について以下でその特徴と課題を考察していくこ
ととする.

今まではデザインの対象としては,紙面,字体,立体物などがその領域であったが,情報デザ
インとなった場合には,もう一つ上のレイヤー,文章などの意味内容(コンテンツ)の考察も要
求されることとなるのである.

インターネットの普及により,より多くの人が自分の力で表現できるようになった現代では,美
術,デザインを専門としない者でも下に掲げたような問題意識を持ち,美術の世界で培ってき
た表現技術を理解することでより豊かな表現力を獲得することができるはずある.

言語
象形文字,表音文字,話し言葉,書き言葉,など,言語は文化と非常に密接な関係を持ってい
る.トンパ文字などの象形文字にユニバーサルデザインとしての関心も高まっている.いずれ
にしても日本は象形文字を輸入し使用を始めた表音文字の民族であり世界でも稀なことばの
使用をしている.言語による表現の可能性と限界はまだ解明されていないのが現状である.

平面と立体
遠近法による奥行き感の表現技法が発明され,平面に立体を表現する方法が確立したが,現
代美術ではその遠近法を否定することに立脚している.コンピュータという表現メディアを獲得
した我々には立体と平面の境界があいまいになってしまっているようである.今こそ,立体と平
面の表現技法を再考する必要がある.

空間
コンピュータの登場によって,我々は再び時間と空間の概念を整理する必要があるようであ
る.設計図,地図など空間表現する技法は存在しているが,時間を組み込んだ場合の十分な
表現力はまだ持ち得ていない.我々は,空間概念の拡張の必要に迫られているのである.

身体
身体表現能力の可能性と限界も我々はまだ知らないのかも知れない.20世紀初頭から芸術
家はバレエに憧れと畏敬の念を持っていたが,今日でもフランクルフルトバレエ団の圧倒的な
表現力の前にはどんな言語も不要であるかの気にさせられるのである[26].

音,音楽などの時間芸術
音楽は,時間の表現技法が確立した芸術である.しかし他の芸術と異なり鑑賞時間を表現者
に制約を受けるという特徴も存在している.つまり情報の圧縮伝達が難しいのである.舞台芸
術,映像の記録も同様のことが言える.映画においては,映画の技法を100年かけて構築し,
現在でも重用されている.

動的な表現力と情報デザイン
静的な表現技法は,美術の世界ではすでに20世紀に確立しているものが存在している.が,
動的なものを表現する方法はまだ実験が始まったの段階である.

これはどういうことを示しているのか.ダイナミズムを理解し表現することが難しいということな
のであろう.体験を表現する訓練が必要と言い換えることもできる.環境が様々な要因のもと
に変化することを前提にデザインするという事態の想定は非常に難しいものである.生物の世
界の場合には,これら外的変化への適応というものに,多様性という解を出しているのである
が,あるコミュニティの中に多様なものを用意するというのは,習熟度の問題,維持費用の問
題,など課題も多い.そもそも今までのデザインというのは形があるものが対象であり,形が変
わらない前提でなされていたものである.人間の生活のなかで形が変わるもの,形のないまま
継承されるものは,文化という非常におおきなくくりで取り扱われていた.教典,奥義書などと
いう形で伝統を残すと同時に,祭事として,イベントという身体性あるものに置き換えて,表現
を試みた.

コンピュータが多くの人々に変化するものを取り扱うことを可能にしはじめているのである.鑑
賞方法の決まっていないメディアアート作品などもその典型に挙げることが出来るが事態はも
っと複雑になって身近な問題としてふりかかってきている.

昔ならば家族の記録は写真館に行って撮る写真をアルバムに貼るという行為であったのが,
やがて家庭のカメラに,そして現在ではヴィデオに,記録媒体も紙から磁気テープへ,そしてハ
ードディスクに.見方も本の形式からテレビを鑑賞する方式にとめまぐるしく変化してきたがそ
の記録,編集,表現方法については方式が標準化出来ていない.

このように,今まで存在している「デザイン」の手法では解決できない問題が目前に存在するの
である.

2つの事例にも揚げたように,従来のdrawingでは表現できない部分が多々あり,それらは関わ
った人々の間で共通の認識を持つために「体験を共有」「誤解を恐れずにdrawingする」
「drawingできそうなメディアを試行錯誤利用してみる」といった試みがようやく始まった段階なの
である.
とりあえず何から手がけてみるのか,以下の4つからとりあえず着手する必要があろう.
1)習うより慣れろ
2)表現と体験の違いを理解する
3)情報デザインは理解の為の手段にとどまらず,表現するところまで達しているのか常に振り
返る
4)絵画なら絵の具と筆,音楽なら五線譜とピアノ,情報デザインにはプログラムとコンピュー
タ,表現の定番を見つける
MITメディアラボの前田ジョンはデザインにアルゴリズムを組み込むことでデザイン領域の拡張
を試みている.
CMUの石崎豪はキネティックタイポグラフィにより文字の表現力にダイナミズムを与える試みを
している.
筑波大学の原田泰はJAVAを用いて,デザインの表現の様々なシミュレーションを行えるデジ
タルならではの新しい教育手法を始めている.興味深い先行事例は続々と登場しはじめてい
る.

しかしながら,現段階ではこれという決定打は見えていない.誰もが使えるものになっていな
い.デザインの考え方がまだ明示できる段階までは来ていない(歴史学では,社会史というも
のの見方,経済学では静学に対しての動学,などという同様のアプローチも出てきている点が
非常に興味深いところである).

まとめ,情報デザインの目指すもの
情報デザインはどこに向かおうとしているのであろうか.最後に現在の取り組み状況と,現在
の関心事項について述べる.

日本デザイン学会情報デザイン研究部会の発足
今まで掲げた問題意識のもとに,2001年3月に日本デザイン学会内に情報デザイン研究部会
が発足することとなった.本研究部会では,研究手法および,成果発表方法として,情報デザ
インの領域が,論文にしづらい対象であること,デザイン系の人々はそもそも論文化の優先順
位があまり高くない,という事情もある上,ディスカッション,研究手法にも戸惑いが出るようで
ある.以下の3つの段階的な手法を検討している.
1) 通常の研究会の形式による問題提起とその解決手法の提案,および,質疑応答.
2) ワークショップ開催による新しいデザイン手法のプロセスの共有(および,教育普及の実
践).
3) 展覧会により,より多くの人々へへのコンセプトの提示と,プロジェクトを立ち上げる事での
コミュニティのビジョンとプロセスの共有.

インタージャンル
情報デザインというジャンルを作る事自体が間違いなのかも知れない.今情報デザインで考え
ないといけない対象/領域というのは既存のカテゴライズされたジャンルとジャンルの間にあ
るのであろう.そのジャンルを跨った問題点を解決する接着剤の役割を,情報デザインが担う
事が出来ればという願いを持っている.

マルチメディアの表現力
美術の持つ表現力を拡張することがマルチメディア/ニューメディアの表現方法の開発に適し
ているのではないか.デザインを志す者は誰よりもニューメディアの技術動向,使用事例,表
現方法の追求にどん欲でなければならない.これらの動向を常に把握するためには,工学,
認知科学,社会学といった多様な領域と絶えまない交流を続ける必要がある.

静学から動学へ
ある状態にとどまっているものは従来のデザイン手法(スケッチ/デッサン)で表現ができる.
ある状態から別の状態へ変化している様相の表現をするデザイン手法の実験を重ねることが
必要なのであろう.録音,録画という手法が代替するという結論に達した場合,時間軸の編集
技法の確立という別の問題が発生する.
どちらにしても現代の社会現象の問題を発見,説明,解決を表現するためのデザインの新し
い手法の確立が求められているのである.



情報デザインに関する活動,関連年表(大和田)

年月タイトル形式解説
1998.02ICCニュースクール
「ことばとコミュニケーション」
ワークショップICCとニュースクールについては
htt://www.ntticc.or.jp/を参照
「ことば」に関しては,その後
ことば工学研究会へ発展
http://www.kecl.ntt.co.jp/banana/
を参照
1999.02ICC企画展
「共生する/進化する
ロボット」展
展覧会
シンポジウム
ワークショップ
ロボットを作る
ロボットとの共生
1999.10VisionPlus7国際会議日本初の情報デザイン国際会議
ICC Future Design Symposiaワークショップvp7とも連動したシンポジウム未来
のデザインの形を予測した.
2000.09Acting Out
情報デザインワークショップ
ワークショップNTT CS研と多摩美術大学情報デ
ザイン学科須永先生,植村先生,
永井先生,甲南女子大学先生ら
と,未来のコミュニケーションツー
ルをデザインする実験を行った
2001.03ことば工学研究会
「ことばとデザイン」
研究会様々な領域が協調的に活動を行
うことで新しい領域が切り開かれ
ていく可能性を見いだした研究会
この後,いよいよ情報デザイン研
究部会の発足へ加速がつく
2001.05情報デザイン研究部会発足日本デザイン学会
春季大会
日本デザイン学会理事会にて,に
情報デザイン研究部会の発足が
承認される.
2001.06ファジィ学会解説記事これが情報デザインだというもの
はないのだろうという思いこみを持
ち,大和田の考える情報デザイン
の考え方をファジイ学会論文誌に
解説記事として投稿
2001.10日本デザイン学会
秋季大会
研究発表大会NTT CS研と多摩美術大学須永
研究室の研究による「不思議黒
板」の研究成果の発表





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2001年6月7日