プログラム

見どころ その3 「意味理解による新しいサービスの創造」

6月4日,NTT CS研オープンハウス×未来想論2009で未来想論「コンピュータが言葉の意味を理解できると何が変わるか? ~検索エンジンを超えるもの~」のオーガナイザを務めるNTTコミュニケーション科学基礎研究所の平博順,東中竜一郎両氏に今回の未来想論のポイントを聞いた.
見どころ その3 「意味理解による新しいサービスの創造」
「検索エンジンや,コンピュータによるアンケート自動集計・電話応答・質問応答などのサービスでは,文章の表面のみを扱うキーワード検索が広く使われています.一方,コンピュータに言葉の意味を理解させる意味理解技術によって,キーワード検索を超える検索精度の実現,そして新たなサービスの創造が期待されています.未来想論では,意味理解技術の現状を紹介し,この技術の発展により10年後どのようなサービスが生まれ得るのかについて,パネリストと来場者の皆様と議論したいと思います」と平・東中両氏は語った.なるほど,サブタイトルの“検索エンジンを超えるもの”の中には,意味理解技術により現状のキーワード検索を超える検索エンジンを開発するということと,検索エンジンを超えるサービスを創造するという2つの意味が込められていることを理解した.「意味理解技術が近年盛んになった背景には,コーパス(注1)やウェブ上の大量の言語資源が利用できるようになったことと,コンピュータの性能向上があります.現状ではウェブ上の大量のテキストから『AならばB』といった因果関係の知識をある程度自動的に獲得することが可能になっています」と平氏は語る.しかし,多様な文脈に即して柔軟に対応できる意味理解技術はまだ難しいようで,あたかも人間が文章の行間を読むように意味を理解するコンピュータの実現にはさらなる研究が必要のようだ.

当日のポイント

当日の司会は東中氏,パネリストは,奈良先端科学技術大学院大学の乾健太郎氏,富士ゼロックス株式会社の増市博氏,NTTレゾナント株式会社の桝村季弘氏,そして平氏の4名である.パネリストの中で,乾氏は深い意味理解や情報抽出の研究,増市氏はLFG(語彙機能文法)に基づく構文・意味解析の研究,そして平氏は述語項構造解析(注2)の研究に従事しており,乾・増市・平氏からは現在の意味理解技術の最前線について聞くことができるであろう.一方,桝村氏はポータルサイトgooで新しい検索サービスの企画・開発を行っており,意味理解技術が検索エンジンをどのように変えるのかについて聞くことができるであろう.「今後の意味理解技術を用いた新しいサービスについて皆様と議論できれば面白いのではないかと思います」と東中氏.来場者の皆様とともに未来のコミュニケーションのあり方を様々に思い描くことで,創造力溢れる議論の場が生まれることを期待したい.

オーガナイザについて

平氏はこれまで,有機物を使ったデバイスから統計的機械学習と幅広い分野にわたって研究を行ってきた.それぞれの研究には関連がないようにも見えるが,平氏曰く「生物や人間の振る舞いをシミュレートすることに興味がある」とのこと.一方東中氏は,言葉の言い換え,対話システム,質問応答システムなどの研究に従事してきた.最後に未来のコミュニケーションについて尋ねたところ,「テキストに留まらず画像や音声といった他のメディアとも融合して意味理解技術が発展していくことを願っています.例えばユーザの入力した質問に対し,ユーザの意図を汲み取り,映像や画像を駆使してユーザの想定していた答え以上のものを出力してくれるようなシステムが作れればと思っています」(平氏),「今後は,対話システムに意味理解技術を取り入れることで,ユーザが欲しい情報を適切に提供していけるシステムの構築を目指したい」(東中氏)と語った.

(注1)コーパス:自然言語の文章から成るテキストデータ
(注2)述語項構造解析:本質的な意味構造を解析すること

CS研オープンハウスの見どころ
CS研オープンハウスの歴史

What's New
  • RSS