プログラム

見どころ その4 「Seeds(シーズ)とNeeds(ニーズ)を引き合わせるために」

6月5日,NTT CS研オープンハウス×未来想論2009で未来想論「QoLを支える次世代インタフェース ~ニーズとシーズを無理なくマッチさせる社会に向けて~」のオーガナイザを務めるNTTコミュニケーション科学基礎研究所の雨宮智浩氏に今回の未来想論のポイントを聞いた.
見どころ その4 「Seeds(シーズ)とNeeds(ニーズ)を引き合わせるために」
「近年のヒューマンインタフェース技術の進歩には目覚ましいものがあります.そして“これが何に使えるのか?”ということを突き詰めていくとQoL(注1)というキーワードが見えてきました.また,研究所ではシーズ(注2)を生み出すことがミッションの一つですが,一方で現場ではニーズ主導の技術が要求されています.未来想論では,生活の質の向上や障がい者の支援に役立つようなヒューマンインタフェース技術の現状をご紹介します.そして基礎研究から生み出されたシーズと現場のニーズを無理なくマッチさせるにはどうすれば良いかを,パネリストの皆さんの成功例と失敗例を交えながら,来場者の皆さまと議論したいと思います」と雨宮氏は語った.このシーズとニーズをマッチさせた例の一つが,雨宮氏が今回新たに開発したCDサイズの『ぶるなび』(後述)である.このCDサイズの『ぶるなび』を用いて,京都市消防局と京都府盲学校にご協力いただき,視覚障がい者の歩行誘導の実験を行っている.現場では非常に参考になる意見が聞けたとのこと.「シーズの持っている魅力をアピールすることが重要です」と雨宮氏.確かにシーズとニーズがうまくマッチすることで,これまでにはない新たなサービスを予感させる.

当日のポイント

当日の司会は雨宮氏,パネリストはお茶の水女子大学の椎尾一郎氏,長野大学の伊藤英一氏,そしてNTT CS研客員研究員の渡邊淳司氏の3名である.椎尾氏は実世界指向インタフェースやユビキタスコンピューティング,伊藤氏は障がい者支援,そして渡邊氏は人間の視覚・触覚メカニズムの解明や芸術作品を対象にそれぞれインタフェース技術を応用した研究を進めている.未来想論では,高齢者・障がい者・生活一般・芸術といった幅広いトピックとインタフェースとの関わり,さらにはこれらの研究を進めていく上で重要なニーズとシーズとの関わりについての議論が期待できるであろう.特に椎尾氏の日常生活を豊かにする試みは他の研究と一線を画す着眼点の素晴らしさ,伊藤氏のリハビリ現場の話はこれからの高齢化社会にも関わるテーマという点において興味深いところだ.

オーガナイザについて

雨宮氏は,大学在籍時から視覚障がい者を支援するインタフェースの研究に従事してきた.NTT入社後は,力感覚の錯覚を利用して牽引力を発生させるインタフェース『ぶるなび』を開発し,現在視覚障がい者の歩行誘導に役立てようとしている.最近では,『ぶるなび』による歩行誘導の実現に向け,その静音化,小型化や八方位へ牽引力を発生させることにも成功した.「工学と人間科学をつないでいくような研究をしていきたい」と雨宮氏.ニーズとシーズを無理なくマッチさせるだけでなく,工学と人間科学を無理なくマッチさせるという夢を持っているようだ.

(注1)QoL:Quality of lifeの略.物質的な豊かさだけではなく,人間の身体的,精神的豊かさなど人間の生活全体の質のこと.近年,QoLの向上は高齢者・障がい者の生きがいの創造と関わりがある
(注2)シーズ:企業や研究開発者が提供できる技術,ノウハウ,アイディア

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