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自閉スペクトラム症者の聞こえ方を探る独特な知覚をもたらす聴覚情報処理メカニズム ![]() |
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どんな研究 |
自閉スペクトラム症(以下ASD)はコミュニケーションの障がいを特徴とし、純音聴力が正常にもかかわらず雑音下での聞き取りが難しいことが知られています。しかし、詳細な聴覚特性やメカニズムはわかっていません。本研究では、三つの切り口からASD者の「聞こえ方」に迫りました。 |
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どこが凄い |
「聞こえる・聞こえない」という聴力検査的な観点だけでなく、末梢から中枢に至る情報処理の特性や知覚の内容を詳細に検討しました。その結果、ASD者は単語を反復聴取すると逸脱した多様な知覚が生じる傾向が強いなど、従来知られていなかった意外な特性を明らかにしました。 |
めざす未来 |
ASD者の知覚の解明により、知覚の多様性を明らかにすることは、スムーズな情報伝達のための補助手段の提案につながる可能性があります。さらには、人間の知覚の多様性について理解を推進することで、より円滑なコミュニケーションを実現するための支援方法の開発・発展に寄与します。 |

[1] H. Fujihira, C. Itoi, S. Furukawa, N. Kato, M. Kashino, “Sensitivity to interaural level and time differences in individuals with autism spectrum disorder,” Scientific Reports, Vol. 12(1), pp. 19142, 2022.
[2] C. Itoi, N. Kato, M. Kashino, “People with autism perceive drastic illusory changes for repeated verbal stimuli,” Scientific Reports, Vol. 9(1), pp.15866, 2019.
糸井 千尋(Chihiro Itoi)
柏野多様脳特別研究室