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人工ニューラルネットワークで紐解く聴覚システム人工内耳と両耳情報処理へのより深い理解のために ![]() |
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どんな研究 |
従来、人の獲得した聴覚特性そのものについては多く語られてきました。しかしその特性がどのような入力と学習を介して獲得されたのかという問題に直接取り組むのは非常に困難です。そこで本展示では、 臨床的・学術的な側面の問題に人工ニューラルネットワークを用いて取り組み、それぞれ新たな知見が得られました。 |
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どこが凄い |
①人工内耳を装用した難聴者はピッチ知覚が苦手と言われていますが、人工内耳信号の中にある程度十分なピッチ情報が含まれていることを発見し、主に生理学的な要因に起因することを明らかにしました。②自然音を認識するように訓練した人工ニューラルネットワークの中身を調べたところ、生物の聴覚系にみられるものと同等の両耳情報処理特性を示す素子(ニューロン)が発現することを発見しました。 |
めざす未来 |
人工内耳装用後も適切なリハビリテーションによって、静音環境下であれば健常者と大差ないピッチ知覚を獲得出来るようになるかもしれません。また、聴覚神経系に合致した聴覚情報処理技術をより高度にしていくことで、人らしい振る舞いをするAI技術や人工内耳のような装置の更なる発展をめざします。 |

[1] 芦原孝典, 古川茂人, 柏野牧夫, “DNNモデルによる人工内耳模擬パルス信号からのF0推定,” 日本音響学会春季研究発表会, 2022.
[2] T. Koumura, H. Terashima, S. Furukawa, “Emergence of ITD selectivity in a deep neural network trained for binaural natural sound detection,” in Proc. 42nd Association for Research in Otolaryngology (ARO) MidWinter Meeting, 2019.
[3] TC. Yin, JC. Chan, DR. Irvine, “Effects of interaural time delays of noise stimuli on low-frequency cells in the cat's inferior colliculus. I. Responses to wideband noise,” Journal of Neurophysiology, pp. 280?300, 1986.
芦原 孝典(Takanori Ashihara) 人間情報研究所
上村 卓也(Takuya Koumura) 人間情報研究部 感覚表現研究グループ
Email: cs-openhouse-ml@hco.ntt.co.jp