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少子化が人口密度に関係するってホント!?

生活史戦略による予測と実証

少子化が人口密度に関係するってホント!?
どんな研究

少子高齢化は深刻な社会問題のひとつです。この研究では、国勢調査等の公開統計データを分析し、人口密度の高い地域では少子長寿傾向のあることがわかりました。競争の激しい状況では、子どもの成功のために、数を減らしてひとりあたりへの投資を増やすためであると考えられます。

どこが凄い

少子化については、出産・保育制度や就業・経済状況など、社会経済的観点から議論されることが多いようです。一方、ここでは生物学的観点から少子化の問題にアプローチしています。そうすることでこれまで見えてこなかった少子高齢化の本質的理解が進みます。

めざす未来

過去50年間、日本だけではなく、世界中で少子高齢化が進行しています。本研究では多角的な視点で現象を理解し、本質的な解決策立案や解決策のための基礎知見を提供していきます。そうして、人類および地球環境全体の持続的発展に寄与していきたいと考えています。

少子化が人口密度に関係するってホント!?
関連文献

[1] 松田昌史, 小林哲生, “人口密度および経済状況と人々の生活史戦略 ~ WEB調査を用いた分析 ~,” 信学技報, Vol. 119, No. 394, HCS2019-69, pp. 89-92, 2020年1月.
[2] 松田昌史, “日本の少子高齢化と人口密度 ~ 都道府県レベルと市区町村レベルの比較 ~,” 信学技法, Vol. 118, No. 437, HCS2018-66, pp. 107-111, 2019年2月.

展示説明ムービー
Q&A
Q.質問/コメント A.回答
Q.質問/コメント

少子高齢化の原因としては、経済問題ばかりが重要視される中、生物学的な視点での指摘は新鮮で興味深かったです。
この点、人口密度と遅い生活史指標との関係性を示した図において、特に大阪が他の都道府県との特性から外れている(人口密度は大きい一方、遅い生活史指標が低い(=早い生活史指標を維持))ことが見て取れるように思いました。これは、大阪の県民性がいわゆる せっかち等 といわれることと一致することのように思われました。このことからも少子高齢化問題を解決するためには、単に画一的に人口密度を改善すればよいということではなく、その地域の県民性、文化、歴史、経済等を鑑み、総合的に判断すべきであるということを示唆しているように思いました。

A.回答

今回の展示では人口密度で大局的な観点から議論しましたが、ご指摘のように、実際にはそれ以外の要因が複雑に絡み合う現象であることに間違いないと思います。今後は、地域ごとの特性を考慮し研究を深めていきたいと考えております。

ご視聴、コメントありがとうございました。

Q.質問/コメント

短絡的かつ倫理的に疑問のある質問で申し訳ございません。
ゾウもネズミも現状生き残っているという観点から見て、早い/遅いのどちらが優れている、ということはないのだと思います。
ですが、仮に早い生活史戦略へ人類がシフトすることがあれば、多産(=生産力の増加)多死(=弱者、消費者の減少)となり、ヒトという種全体へのメリットとなるのでしょうか。

A.回答

おっしゃるとおり、早い遅い生活史戦略は生物全体で見ればどちらかが優れているというものではありません。それぞれの種が、かれらの置かれた環境の中で最適な方略をとることで今日まで繁殖と生存してきたわけであります。さまざまに複雑な要因が関連しあって、現在の姿や行動様式があると考えられています。

さて、ヒトの場合ですが、ヒトは厳しい環境に対峙するために環境そのものを大きく作り変えたり、複雑で高度な社会制度を作ったり、歴史的な経験やはるか未来の予測に基づいて行動する珍しい生物種です。
お書きいただいたような、生活史戦略の変化や想定されるデメリットがあったとしても、科学技術や倫理観によって多くの人が幸せになるような方法を見つけ出すのではないかと期待しています(そうあってほしいです)。

最後は僕の青臭い夢です。失礼しました。
ご質問ありがとうございました。

Q.質問/コメント

以前から非常に興味深い研究だと思っております。
今回人口密度に注目されていますが、同じ人口密度でも香港のようにマンションだらけで土地利用効率が高いところと
スラム街のように平屋だらけのところでは、そこで住む人に対する人口密度がもたらす影響は異なってくるように思いますが
こうした土地利用効率の要素も今後モデルに組み込んでいくのでしょうか?

A.回答

今回の展示ではよりマクロな観点(都道府県)からの分析でした。ご指摘の通り、マクロな地域の中にはよりミクロな地域差(e.g. 都市利用効率)がありますし、そこに住む人々が準拠する地域も異なるかもしれません。たとえば、自宅は人口密度が低い地域だが、通勤通学では人口密度の高い地域で暮らすなど。そういう人は、どちらの状態を考慮して行動を決めるか定かではありません。

現在は、WEB調査などを併用し、個人のより詳細な居住地(市町村単位)や生活パターンや理想とする家族形態の違いなどを含めた分析を実施中です。土地効率等の要因も考慮して進めていきたいと存じます。

ご質問ありがとうございました。

Q.質問/コメント

体感的には、人口密度が高い地域ほど仕事が多く、競争はあるものの、生存の難易度は下がるように感じます。
資源の状態よりは、競争の激しさに本能的な部分が強く反応し、遅い生活史戦略をとってしまうということでしょうか?

A.回答

お書きいただいたとおり、資源の過多の問題ではなく、競争の激しさに反応するものと考えています。
生物の「成功」は単に生存するということではなく、「どれだけ多くの子孫を残せるか」にあるとみなすからです。つまり、生き残っても自分の代で終わってしまったら、その個体はあまりうまくいかなかったとみなします(もちろん、それを全てそのまま現代人に当てはめて価値判断をするものではありません。現代人は一部に生物学的な特徴を残しつつ、個人の尊厳や人生観を有します。子を持たなかった人を責めるものではありません)。

また、現代人はより多くの人が生存できるよう、互いに助け合う社会を作りさまざまな制度も有する生物です。そのため、資源の獲得や基本的な生存については驚異が少なくなっています。その分、自身や子孫の競争に目が向くようになっているのかもしれません。

ご質問ありがとうございました。

Q.質問/コメント

分析の仕方に興味があるのですが、(1)「所得を調整しても人口密度の効果が残った」とはどのような分析をして得た結論でしょうか?(偏相関係数でしょうか) (2) パネル中の散布図は特に「調整」をすることなくプロットしたものでしょうか?

A.回答

(1)「所得を調整しても人口密度の効果が残った」とはどのような分析をして得た結論でしょうか?
→ 重回帰分析を行いました。説明変数に所得と人口密度を投入したものです。

(2) パネル中の散布図は特に「調整」をすることなくプロットしたものでしょうか?
→ 散布図は調整無しでプロットしたものです。

ご質問ありがとうございました。

Q.質問/コメント

生物学的視点を用いるメリットはなにか

A.回答

社会的要因や政治経済状況は、時代や地域、文化などによって様々に変化します。一方、人間も生物である以上、生物学的視点から分析することで時代や地域などを超越した普遍的な知見が得られると期待できます。

Q.質問/コメント

女子教育の向上や晩婚化によって生涯に産める子どもの数が減った可能性は?

A.回答

おそらくそれも原因の一つと考えられます。しかし、晩婚化によって出産時期が遅れることで子どもの数が減るのか、逆に、そもそも子どもの数が少なくてよいと思うから晩婚になるのかはわからず、さらなる調査が必要だと思われます。

Q.質問/コメント

若年層の家計が苦しく、子どもの養育費用が捻出できない問題では

A.回答

確かに収入が影響しています。本研究の分析でも、県民所得が多い都道府県ほど遅い生活史戦略になるという結果が示されています。ただし、所得を調整しても人口密度の効果が残りましたので、原因は単一的なものではなく、多角的な観点からアプローチすることが必要だと考えます。

ポスター
連絡先

松田 昌史 (Masafumi Matsuda) 協創情報研究部 インタラクション対話研究グループ
Email: cs-openhouse-ml@hco.ntt.co.jp

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