Q.質問/コメント | A.回答 |
Q.質問/コメント 質問1:被験者が知覚した左右を回答させる手段として、左右の一方の腕や手を使ってボタンを押すことに、何らかのアーチファクトが混入する懸念があります(サッケイド中に何が実行されているのか分からない段階のため、あらゆる可能性を排除したいため)が、実験試行が左右対称に行われているから、問題ないとお考えですか? w/コメント:非対称な上肢下肢の運動があると、体幹のバランスを維持するための補償的運動が意識下で誘導されます。今回の実験試行で、被験者がどのような姿勢であったのか、座位なのか、立位なのかなどによって、何らかの差が出るかもしれません。また、彼らの利き腕についても。 質問2:試験音が耳障りな音ですが、この刺激に反応したとも考えられますが、この音源にした経緯や、他の音源を用いた試行があったのか、教えてください。w/コメント;刺激を減らした音源として、例えば、ピンクノイズに滑らかなエンベロープをつける、など。 質問3:これは視覚(もしかするとサッケイド自体が視覚とは無関係である可能性も)と聴覚の関係、かつて、産総研だったと思いますが、歩行中の被験者に左右格別に聴覚刺激を与えると、意図する進行方向を撹乱する実験がありましたが、これとどこか共通の機構があるようには思いませんか? 以上です、長くなりました。 | A.回答 ご質問ありがとうございます。 [質問1] おっしゃる通り一方の手でボタン押しをするとアーティファクトが乗る可能性があります。本実験では左手でボタン押しするセッションと右手でボタン押しするセッションを半分ずつ実施してカウンターバランスしました。また、ボタン押しの手がどちらかによって効果に差はありませんでした。姿勢については、椅子に座り顎台に頭を乗せてもらい、なるべく頭を動かさないよう指示を与えております。立位での実験は実施していないためわかりませんが、何らかの違いが出るかもしれません。ただ立位の場合頭の固定が難しく、体動によるアーティファクトが乗ることが考えられます。利き腕は非常に面白いポイントだと思います。マイクロサッカードのバイアスの出方や視線方向あるいは注意タスクの左右差などと関連する可能性があります。今回は残念ながら利き腕の情報をとっていなかったため、今後可能な範囲でデータを取得していきたいと思っています。 [質問2] 今回はホワイトノイズ以外の標的刺激を用いていません。過去の知見から音のオドボール刺激としてホワイトノイズが顕著に生体反応に影響を及ぼすことが示唆されていたためです。また詳細は省略しておりましたが、参加者のホワイトノイズ検出閾値をベースとして標的刺激の音圧レベルを3種類用意しています(小・中・大)。今回の実験では標的刺激の音圧が大きくなると反応時間は早くなりますが、マイクロサッカードの効果に影響はありませんでした。これは、音刺激の特性に起因した注意(ボトムアップ的注意)よりも持続的な左右どちらかへの注意(トップダウン的注意)が今回のマイクロサッカード方向の変化に影響を与えやすいことを示唆します。 [質問3] 興味深い研究のご紹介ありがとうございます。左右に音が呈示されれば運動に影響が出るという点で本展示と共通点がありそうです(”サッケイド自体が視覚とは無関係”という点がわかりかねますが)。しかし、ご紹介いただいた研究の詳細がわからず何とも言えませんが、おそらく実験タスクや計測対象が大きく異なると思いますので共通の機構というのは無理があるように感じます。もし本展示の結果をその研究に生かせるとしたら、意図する進行方向が潜在的な注意のレベルで(例えば実際に歩行に影響が出る前に)撹乱されているかをマイクロサッカードから推定するといったところでしょうか。 |
Q.質問/コメント 意図的運動と注意集中の関連を研究している者です.今回のご研究では聴覚刺激は受動的に引き起こされたものとお見受けしましたが,人が積極的に生起させた聴覚刺激(例:自分でボタンを押して音を発生させる)に対するマイクロサッカードの反応は今回の結果と一致するのでしょうか?刺激の発生に対する人の意図の有無と,サッカードによる注意の関連が見えてくると面白いと思いました.何か知見をお持ちでしたらご共有いただけますと幸いです. | A.回答 興味深いご質問ありがとうございます。 おっしゃる通り今回の聴覚刺激は人が生起した音ではありません。自己生成した音を使った場合と今回の場合を比較するタスクを考えるのが難しいところですが、自分が意図的に音を生成した場合は結果が異なるかもしれません(やってみないとわかりませんが自分の予想では違うんじゃないかなと思います)。 例えば最近の研究で、予測可能な音を呈示した場合、その呈示タイミングよりも少し前にマイクロサッカードの発生率が変化することが報告されています(Abeles et al., 2020, Nat Commun 11, 3524)。自己生成した音の場合も予測可能な場合だと思います。Abelesらのように受動的な音呈示で予測可能にする場合と自己生成の場合(運動行為そのものの効果や遠心性コピー: efference copyのような効果が加わる場合)はかなり異なる気がしますが、予測できる音や意図的に生成した刺激に対して、効果的に注意システムを調整するような機構があれば面白いと思います。
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Q.質問/コメント 音でなく他の刺激(たとえば左右のランプ提示)でも同じような無意識のマイクロサッカードは発生するのでしょうか? また、標的刺激(例えば左側の音)の割合はどれぐらいですか? 図を見ると左右ほぼ同数のように見えますが.
| A.回答 ご質問ありがとうございます。 視覚刺激による研究はすでに多く報告されており、左右のランプ呈示でも同様の効果が見られると思われます(効果の出るタイミングや強さは異なるかもしれません)。 触覚刺激との関連に関する研究はほとんどありませんが、予測可能なタイミングで触覚刺激が呈示された場合は、刺激呈示より前にマイクロサッカードの発生率が減少することが最近報告されています(Badde et al., 2020, Nat Commun 11, 3341)。ただし、触覚の注意方向との関連は未知です。
展示では詳細を省いておりましたが、標的刺激の割合はこの実験では8%(左右それぞれ4%)です。一回のセッションで左右への音を800回呈示しているので、標的刺激の数は左32回・右32回です。呈示タイミングはランダムですが、標的刺激が連続して現れないよう標的間隔は最低でも音呈示6回分は空けて呈示するようにしています。800回呈示は長いと思われるかもしれませんが、音の長さが短いので一回のセッションの長さは2分半くらいです。 |
Q.質問/コメント マイクロサッカードの発生方向を制御することによって(例えば注視してもらう点を動かして眼球の微小運動を生起させるとか)、被験者の注意方向、もしくは反応速度を変えることは可能でしょうか? | A.回答 ご質問ありがとうございます。大変面白いポイントだと思います。 今回はそのような実験を行っていないのでわからないというのが正直なところですが、今回の反応速度とマイクロサッカードの関連はボタン押しとほぼ同時か少し前に現れているようでした。なので、マイクロサッカードの発生方向が決まってから行動パフォーマンスの変化が生じる可能性があります。 別の研究で、自発的に起こるマイクロサッカードを検出してからマイクロサッカードの方向に合わせるように視覚cueを呈示すると、方向が異なる場合より成績がわずかに良いことが報告されています(Yuval-Greenberg et al., 2014, J. Neurosci, 34(41):13693-700)。 効果的にマイクロサッカードを制御できれば注意方向や注意レベルを操作できるかもしれません。 |
Q.質問/コメント 眼球運動を計測すれば音への注意がなんでもわかるんですか? | A.回答 今回の研究では左方向の音への注意と右方向の音への注意の二種類しか調べていません。音への注意と言っても様々なものがあり、音の高さや音色といった空間的情報以外のへの注意も重要です。(例えば女性の声に注意するか、男性の声に注意するか)。そういった様々な音への注意と眼球運動の関係はまだ明らかではありません。
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Q.質問/コメント マイクロサッカードとはなんですか? | A.回答 意識していなくても1秒に1,2回程度発生する微小な眼球運動です。対象物の間を素早く視線移動する際に生じる通常のサッカードと特性が類似していますが、運動の大きさが非常に小さいため「マイクロ」と呼ばれています。
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