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磁場をうごかす・磁場がうごかす

磁性触覚技術マグネタクトの発展と応用

磁場をうごかす・磁場がうごかす
どんな研究

永久磁石触覚提示に利用する磁性触覚技術「マグネタクト」は、電源や配線が不要なため低コストでの触覚提示を実現します[1]。しかし、複雑な磁場パターンの書き込みには相応の時間が必要でした。この展示では、複雑な磁場パターンを生成する新しい手法とその応用を紹介します。

どこが凄い

単純な磁場パターンの磁性シートを積層し、磁場を干渉させることで複雑な磁場パターンを生成する手法を確立しました[2]。これにより、着磁に必要な時間が大幅に短縮されるだけでなく、磁性シートどうしの位置を変えることによる提示磁場の動的な制御も可能にしました。

めざす未来

このマグネタクトの進化は、触覚コンテンツの実装コストを下げ、表現の幅を大きく広げます。これにより、子供用の工作キット[3]や絵本はもちろん、本技術を組み込んだポータブルデバイスやウェアラブルデバイスによる多彩な触覚表現やVRコンテンツの実現も期待されます。

磁場をうごかす・磁場がうごかす
関連文献

[1] K. Yasu, “Magnetic plotter: a macrotexture design method using magnetic rubber sheets,” in Proc. the 2017 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI '17), 2017.
[2] K. Yasu, “MagneLayer: force field fabrication by layered magnetic sheets,” in Proc. the 2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI '20), 2020.
[3] K. Yasu, M. Ishikawa, “Magnetact Animals: a simple kinetic toy kit for a creative online workshop for children,” in Proc. CHI EA '21, Article. No. 198, pp. 1–4, 2021.

展示説明ムービー
Q&A
Q.質問/コメント A.回答
Q.質問/コメント

最適な厚みを算出する計算式(スライド動画中の式)の導出についてなのですが、この式はどのように導出されるのでしょうか? 「マグネットシートを単純な磁石のモデルに落とし込んで」というのは例えばマグネットシートを電磁気学的に扱いやすい形状の磁石(radius of the magnetic polarityとあるのでたとえば円柱?)とみなして磁場を表現しているのかと思ったのですが、最適な厚みがどう出てくるのかわかりません(何らかの引力と斥力の釣り合いを考えていますか?)

A.回答

スライド中では詳細を省きましたが、こちらはご推察のように磁石シートの一部を円柱とみなすことで計算の簡略化を行っています。
Magnetic charge model法を用いると、円柱型の永久磁石はその対称性から、中心軸上、磁石からの距離xの点に形成される磁場H(x)が、円柱磁石の高さt、半径R、そして距離xによって簡略的に求まることが知られています。これを利用し、重ねた2つの円柱磁石が中心軸上最上部にて相殺するような条件を求めたところ、当該の数式が導出されました。
この数式に基づくと、同一ピッチストライプ着磁(ピッチサイズ/2=R)を施したマグネットシートを重ねる際、上部磁石厚みt1に対して最適な下部磁石厚みt2が求まることを意味します。
もちろん、3次元的な磁場の広がりとしては積層したものと格子状パターンを着磁したものでは異なる部分もありますが、触覚提示に重要な表面近傍の同様磁場パタンを獲得する手段としては、その速さに十分な価値があると考えています。

Q.質問/コメント

ストライプ状に着磁されたものと、格子パターン着磁されたものを組み合わせるとどうなりますか。

A.回答

引力と斥力が相殺されてしまうため、ほとんど凹凸感は提示されません。

Q.質問/コメント

格子状パターンの場合、なぜ同一のピッチ以外では凹凸感がほとんど提示されないのでしょうか。

A.回答

格子状パターンの場合、重ね合わせるピッチの比率が異なると引力と斥力が相殺される面積の割合が、ストライプパターンのときよりもよりずっと大きくなるからです。
ボコボコという触り心地を提示するには、上のシートと下のシートの発する磁場が、引力で強力にひきつけ合い、斥力で強く反発する、という状態を繰り返すことが重要です。ストライプパターンでは、ピッチが異なっていても引力と斥力の差分をうまく残す組み合わせが作れるのですが、それを格子状パターンにすると相殺される面積の割合が二乗されてしまうため、差分がほとんど残らなくなってしまう、という原理です(添付の画像を参考にしてください。)。
マグネタクトではこの原理を、ストライプパターンでは凹凸感の強度変化、そして格子状パターンでは触覚の選択的提示、という機能表現に利用しています。

Q.質問/コメント

いちど着磁するとどれくらいもつの?

A.回答

一度着磁したパターンは数年間は保持されることが確認できています。しかし、高温、衝撃、振動、折り曲げ、および強い磁場を与えることで磁極の配列が乱れるため、そういった環境で保管された場合、磁場パターンが保持される期間も短くなるでしょう。

Q.質問/コメント

どうやって磁性シートに磁性パターンを書き込むの?

A.回答

磁性材料の中には、いちど強い磁場にさらされると磁化し、その磁場から離れた後にも自ら磁場を発するようになる性質をもつものがあります。その性質は、古くはビデオテープやカセットテープ、またフロッピーやHDDなどの磁気記憶メディアなどに活かされてきました。一般的に売られているマグネットシートにもその性質があるため、たとえばネオジム磁石など、十分な磁力を持った磁石を近づけると、その部分だけ極性(S極かN極か)を書き換えることができます。
そこで、マグネットシートの上に強力な磁石を置きスライドさせるという作業を、S極とN極とを交互に行えば、S極とN極のストライプ模様の着磁をかんたんに行うことができます。あるいは、ペンプロッター(自動でお絵かきをしてくれる機械)に、ペンのかわりに強力な磁石を、紙のかわりに磁石シートを取り付ければ、詳細な磁性パタンを自動で書き込ませることもできます。

ポスター
連絡先

安 謙太郎 (Kentaro Yasu) 人間情報研究部 感覚表現研究グループ
Email: cs-openhouse-ml@hco.ntt.co.jp

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